中国当局、従来から研究開発費の低さを懸念
2018年末に発展改革委員会(発改委)が発表した第13次5ヵ年規画実施中期評価で進捗が遅れているとされていた研究開発費は、2020年対前年比10.3%増、2.44兆元で、預期性指標の投入強度と呼ばれる対GDP比も2.4%まで上昇したが、日米(3%前後)をなお大きく下回っている。
中央国有企業(国企)については2020年、その投入強度は2.55%(前年比0.3%ポイント増)、うち製造企業は3%まで上昇したが(国企を所管する国有資産監督管理委員会)、私企業も含めた「2020年までに2.5%以上」という全体目標は達成できなかった。ただ、それにもかかわらず、第14次規画では目標が「2025年までに3%以上」に引き上げられる可能性が高いとの見方がある(2020年9月23日付新浪専欄)。
中国当局は従来から、基礎研究費が低いことも懸念している。2020年1504億元にまで増加したが、研究開発費に占める割合は6%で、なお先進国の平均15%以上を大きく下回っている。
習近平国家主席は昨年9月に開催した科学者との座談会で、対米を中心にハイテク分野の国際環境は厳しく、次期規画期間の発展は国内での科学技術分野、創新(イノベーション)の加速にかかっていると強調した。
規画建議は科学技術分野の強化と自立(科技自立自強)を強調したが、「科技強国行動綱要」を今後制定するとの方針を示すに止まった。後述の「国内大循環を主体とした内需と外需の双循環」に基づく発展モデル、対米貿易摩擦との関係であまりプレイアップされず、建議でも言及されなかったが、中国当局が計画の廃止を決めた節はない「製造2025」にも関わってくる問題だ(『中国製造業はどこに向かう? 2025年目標の実現可能性を探る』参照)。
実施中期評価で「進捗遅れ」を指摘された指標
その他、実施中期評価で進捗が遅れているとされていた指標は、預期性指標であるサービス業生産額シェアの引き上げ、約束性指標の新建設用地抑制と水質改善だ。このうち、サービス業生産額シェア(2020年までにGDPシェアを56%以上に引き上げる)は、2020年に54.5%まで上昇したが、目標未達に終わった。水質改善(I〜Ⅲ類と呼ばれる良質水資源割合を水資源全体の70%以上、劣Vと呼ばれる農業用水にも使えない汚染水の割合を5%以内に抑える)は目標を大きく超える改善となった(2020年、I〜Ⅲ類83.4%、劣V類0.6%)。ただ、新型コロナ感染拡大に伴う工場操業停止の影響があり、評価は難しい。
実際、2021年1月はI〜Ⅲ類82.7%、劣V類2.3%と、何れも2020年通年実績から悪化している。
新建設用地増加規模については、環境や持続的成長への配慮から土地の集約利用を促進するため、
①土地のストック活用を推進する
②新建設用地の増加を厳格に抑制管理する
③流動化を促進する
という3つの方針を掲げ、規画期間中の建設用地増加面積を上限3256万亩(※1)とする目標を掲げたが、発改委の実施中期評価では、2016〜17年ですでにその41.3%を消化し、期間を通しての目標達成は困難と評価されていた。
(※1)「ムー」、中国の広さの単位で約667m2。
しかしこれも、自然資源部が2018〜19年の2年間で利用した土地ストックは900万亩、2019年新建設用地増加限度500万亩の1.8倍で、土地ストック利用は進んでいるとしており(2020年6月25日付新浪新聞)、最終的に目標は達成されたと思われる(東呉証券宏観専題研究2020年10月時点の予測では3000亩)。
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