高金利でも「間違いなく有益」なアパートローン
金融機関から融資を受ける際は、ローンを組む本人の属性だけでなく、融資対象となる物品(不動産など)も評価の対象になります。投資用不動産購入のためのローン審査において、金融機関の物件評価方法とはどんなものなのか、そして医師が融資を受けるメリットとは何なのかについて説明します。
投資用不動産向けの融資「アパートローン」は、住宅ローンと比較して金利が高いため一見不利益に感じられます。加えて「全額自己資金で買えるのに、なぜ?」と思われるかもしれません。しかし投資家目線で考えると、不動産購入の際は融資を受けたほうが間違いなく有益なのです。
たとえば3000万円の投資用不動産(利回り7%)を自己資金1000万円、残りの2000万円をアパートローン(固定金利2%・返済期間25年)利用で購入したとします。家賃収入は年間210万円(3000万円×7%=210万円)、ローン返済額は年間102万円になり、家賃収入からローン返済額を引いた108万円が1年分の利益となります。
この利益を購入時の自己資金1000万円で割り戻すと実質的な利回りは10.8%(108万円÷1000万円×100=10.8%)となり、全額自己資金で購入した場合より利益率がアップします。これが融資利用による「レバレッジ効果」です。
融資審査における唯一の注意点は「不動産の属性」
金融機関の融資審査では、不動産を購入する投資家本人の属性はもちろん、購入予定不動産も同様に評価の対象となります。購入者の属性評価では「勤務先」「勤続年数」「年齢」「収入額」「金融資産」「居住地エリア」などが見られますが、個人属性ランキング上位にある医師の場合は何の心配もいりません。
問題は購入する不動産の属性です。融資審査における不動産評価は「積算評価法」と「収益評価法」という2つの観点から見られます。それぞれで算出した査定値を比較し、評価が低かったほうの結果を参考に最終的な融資金額が決定されます。
●積算評価法:
積算評価法は土地の価格と建物の現在価格を算出し、その合計額の70%程度を融資評価額とする方法です。土地評価額は路線価に土地面積を掛けて算出されます。一方、建物評価額は再調達価格に建物延べ面積と法定耐用年数から築年数を引いたものを掛け、法定耐用年数で割ったものです。
再調達価格は建築方法によって各金融機関であらかじめm²単価が決まっています。たとえば鉄筋コンクリート造なら20万円/m²、鉄骨造は18万円/m²、木造は16万円/m²程度が目安となります。
●収益評価法
収益物件からのキャッシュフローを借入れ返済原資として融資金額を決定する方法です。家賃収入に空室率を掛けた金額から、経費、固定資産税、銀行返済額などを引いて算出します。この場合、利回りが低い物件だと融資金額が希望より低くなることや、または融資自体が受けられないこともあります。
医師の特権…こんなにある「銀行以外」の融資窓口
医師にとって資金調達先は銀行だけではありません。医療業界団体や行政機関などからも比較的低金利で融資を受けることができます。医師向けの融資はクリニック新規開業資金を想定したものがメインですが、既存建物の増築・改築のための融資制度もあるので、もともと投資用に所有していた建物をクリニックに改装する場合でも相談可能です。
【都道府県医師信用組合】
●融資名:一般資金
●対象者:医師会の会員(融資利用時に組合加入義務有り)
●対象施設等:設備・運転資金などあらゆる資金に利用可能
●限度額:(無担保の場合)8000万円
●利率:0.400%~2.800%(2021年2月現在)
●貸付期間:設備資金等は35年以内、運転資金等は7年以内
※上記は神奈川県医師信用組合の例
【独立行政法人福祉医療機構】
●融資名:医療貸付事業
●対象者:病院又は診療所を開設する個人、医療法人など
●対象施設:一般診療所、歯科診療所など医療施設の新築・増築資金に利用可能
●限度額:融資の対象や資金種類等によって異なる
●融資利率:0.208%~1.200%(2021年2月現在)
●貸付期間:30年以内
【株式会社日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫)】
●融資名:一般貸付
●対象者:事業者(ほとんどの業種が利用可能)
●対象施設等:事業資金等
●限度額:4800万円
●利率:0.300%~2.900%(2021年2月現在)
●貸付期間:20年以内
<まとめ>
金融機関から融資を受けるとなると「審査がシビアで時間や手間がかかるのでは」と不安になるかもしれません。しかし金融機関はお金を貸すことがメインビジネスですから、「属性の良い人にならすぐに貸したい」と考えています。
融資を受けるためのフローもそれほど複雑ではありません。まず申請書類を提出します。次にその書類をもとに担当者からヒアリングされます。このヒアリングは「本人審査」ではなく、融資に有利となるようなプラス材料をより多く聞き出すためのものです。
金融機関の担当者は「この人にどれだけ多く融資できるか」と前向きに動いてくれますから、「借りられない」という心配は一切不要です。逆にもっと攻めに出るべきで、「自分にとってどの金融機関が得なのか」という視点で相手を選別するくらいの強気で問題ありません。
投資において重要な金利と融資期間を比較検討し、もっとも好条件な資金調達先を選びましょう。
大山 一也