会社に大きな利益が出たとき、少しでも税金を払いたくないというのが社長の心情です。だからと言って、無理のある節税手段をとってしまうと脱税となってしまいます。実際過去には、多くの節税手段がありました。それらの節税方法が法的に是か非かを自己判断できる基準について税理士の北村英寿氏が解説します。

 

しかし、これらは通常の節税対策からするとやや突飛なもので、税務上、まったく問題がないとは言い切れません。実際、過去にはいくつかの航空機リース訴訟、映画フィルムリース訴訟があり、「本来の事業目的と投資先の事業内容があまりにかけ離れているため、租税回避目的にすぎない」と否認されたケースもあります。

 

ここが、「常識」を判断する難しさの1つであると思います。本来の事業目的と投資先の事業内容がどのくらい関わりを持っていれば認められるかについては、人により意見が異なります。魚屋が航空機リースを行うのは是か非か。定食屋が映画フィルムに投資するのはセーフか、アウトか――。

 

このように、判断が難しいことがあった場合は、常識に立ち戻ることが一番です。自分の中の「常識」で考えた場合、それはどのように感じられるでしょうか。「自分が航空機リースをやるのは、ちょっと強引かもしれないな」と思えば、それを避ければいいのです。

税金を払って、残りのお金を手元に置くという選択肢

ちなみに私は、相続税対策として節税商品を顧客に勧めたことはありません。確かに投資も1つの方法ではありますが、最終的にお金が全部戻るには10年以上かかります。そのあいだ、何が起こるかわかりません。大病をするかもしれないし、相続が発生するかもしれません。顧客の置かれた状況にもよりますが、それなら先に税金として支払って、残りのお金を手元に置いておくほうが得策ではないかと考えます。

 

たとえば5000万円の現金があり、資産や収入の都合で半分の2500万円を納税しなければならないとします。そのまま納税すれば手元に残るのは2500万円です。

 

しかしそのまま納税したくないと1000万円の節税商品に出資したとします。残りの現金は4000万円となり、支払う税金は2000万円に減ります。しかし税金と節税商品を合わせて3000万円が出ていっていますので、手元には2000万円しか残りません。そう考えると、今そのまま税金を支払い手元に残る現金を多くしたほうが、不測の事態のリスクヘッジにもなるので安心できるわけです。

 

「節税できればどんな手段でも使う」というのは、一見顧客のためのようで、まったく逆効果になってしまう危険性をはらんでいます。

 

読者の皆様に知っておいていただきたいのは、俗にいう「相続税の節税ノウハウ」に、「誰も知らない変化球」などはほとんどないという事実です。変化球があったとしても、それは突飛な手段であることが多く、相応のリスクがあるのです。

 

ですから、「業界の裏を知っている」「税務調査をすり抜けるノウハウがある」「何でも経費にできる」などと言ってはばからない「専門家」には注意が必要です。

 

雑誌や週刊誌のあおり文句を鵜呑みにしたり、誰かの勧めるままに流されたりするのではなく、正しく適切な内容がわかる方にアドバイスなどをもらい、最終的な判断を下すべきであることを忘れずにいてください。

 

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