縮小する「首相プレミアム」の意味

菅義偉内閣への逆風が強まっているようだ。最近の世論調査の結果を見ると、今のところは短命政権のコースをたどっている。特に「首相プレミアム」の縮小は菅首相のリーダーシップに影響するだろう。野党への支持が高まっていないため、政権交代の確率は極めて低く、政治による市場への影響は限定的と言える。ただ、菅政権による構造改革策を期待するのは難しい。※投資のプロフェッショナルである機関投資家からも評判のピクテ投信投資顧問株式会社、DEEP INSIGHT。本連載では日々のマーケット情報や政治動向を専門家が読み解き、深く分析・解説します。

指摘率トップ、「名義預金」を税務署はどうみているか?
『相続税の税務調査の実態と対処方法』>>11/17(水)開催

菅内閣の支持率:短命政権のコースをたどる

最新の世論調査を見ると、菅首相への逆風が強まっているようだ。NHKが2月5〜7日の3日間に行った調査によれば、内閣支持率は3ヵ月連続低下して38%となり、不支持率の44%を下回った。昨年9月の発足直後における62%から、5ヵ月で24ポイントの急低下である。

 

小渕内閣から第2次安倍内閣まで、過去10内閣の発足時の支持率は平均59.0%だった。菅内閣はその水準を超える好調な滑り出しだったわけだ。もっとも、重要なのは歩留まりに他ならない。5年を超える長期政権になった小泉純一郎、第2次安倍晋三内閣以外、例外なく12ヵ月以内に支持率は30%を割り込んでいる(図表1)。そして、発足から16ヵ月以内に退陣を余儀なくされた。

 

期間:2000年1月〜2021年1月 出所:NHKの世論調査よりピクテ投信投資顧問が作成
[図表1]歴代10代の政権の内閣支持率 期間:2000年1月〜2021年1月
出所:NHKの世論調査よりピクテ投信投資顧問が作成

 

一方、小泉、第2次安倍内閣は、当初12ヵ月は1度も40%を切っていない。憲政史上最長記録を更新した第2次安倍内閣の支持率がNHKの調査で初めて50%を割ったのは、発足から18ヵ月目だった。これは、新政権にとり、如何にスタートダッシュが重要であるかを示しているだろう。菅首相の場合、既にこの点において政権長期化の条件を満たさなくなったわけだ。

 

さらに、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会を率いてきた森喜朗会長の辞任が明らかになった。理由は同会長自身の失言だが、政府、与党共に当初は状況を楽観視していた感は否めない。この件も菅政権のダメージとなる可能性がある。

市場への影響:政権交代の確率は低いが…

衆議院の任期満了を8ヵ月後に控え、自民党内にまだ余裕が見られるのは、同党の支持率が35.1%と高水準で安定、野党第1党である立憲民主党の6.8%を大きく上回っているからだろう。自民党が政権を失った2009年8月30日の総選挙の際は、7月の世論調査で旧民主党の支持率が26.4%に達し、自民党の24.9%を逆転していた。

 

ただし、菅首相の求心力が低下しているのは、「首相プレミアム」が急速に縮小しているからではないか(図表2)。首相プレミアムは、内閣支持率から与党第1党の支持率を引いた値だ。内閣支持率は首相への支持率であり、この数字が大きければ、与党は首相人気の恩恵を受けていると言える。

 

期間:2020年〜2021年1月 出所:NHKの世論調査よりピクテ投信投資顧問が作成
[図表2]歴代内閣の首相プレミアム 期間:2020年〜2021年1月
出所:NHKの世論調査よりピクテ投信投資顧問が作成

 

逆に首相プレミアムがマイナスになると、歴代の政権は末期を迎えた。第2次安倍政権も、安倍首相による退任表明直前の2020年8月の調査において、発足後、初めて首相プレミアムがマイナスとなっている。

 

菅政権の先行きには不透明感が漂うものの、野党の支持低迷は、政権交代の確率が低いことを示し、足下の市場に大きな影響は与えていないようだ。もっとも、この政治状況だと、菅首相には、強い政治力を要する大胆な規制緩和など構造改革策に取り組む余裕はないと考えるべきだろう。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『縮小する「首相プレミアム」の意味』を参照)。

 

(2021年2月12日)

 

市川 眞一

ピクテ投信投資顧問株式会社 シニア・フェロー

 

\PR/ 年間延べ2000人以上が視聴!
カメハメハ倶楽部
「資産運用」セミナー

 

【カメハメハ倶楽部のイベント・セミナー】

※<特設ページ>富裕層のためのヘッジファンド活用

 

【10/20開催】専門税理士の売却時の税務面の解説あり!「太陽光発電投資」の出口戦略

 

【10/20開催】国際税務に精通した税理士が“投資家目線”で語る「アジア投資」の進め方

 

【10/21開催】日本で買える「劣後債」投資の実情と具体的な取り組み方

 

【10/21開催】徹底比較!「東南アジア」5ヶ国6都市不動産投資環境

 

【10/21開催】短期償却&長期安定収益狙いの「新規事業投資」徹底比較

 

【10/27開催】コロナ禍におけるM&Aの最新事情と案件説明会

 

【10/27開催】2022年の日本株式市場は?マーケットの見通しを解説!

 

【11/4開催】富裕層のための「交通トラブル」対応ポイント~弁護士が解説!

 

【11/4開催】地主の方必見! 相続税の「払い過ぎ」を回避する不動産の評価術

ピクテ投信投資顧問株式会社 シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。
著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。
2011年6月よりテレビ東京『ワールドビジネスサテライト(WBS)』レギュラー・コメンテーター。

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

著者紹介

連載PICTETマーケットレポート・Deep Insight

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧