米国で期待インフレ率が上昇?株式への影響は?

市場参加者の物価見通しを示す米国の期待インフレ率が、足元ジリジリと上昇している。新型コロナワクチンの接種開始に伴う経済の正常化期待や米バイデン政権による追加景気対策案などを見越して、市場参加者が物価見通しを引き上げていることが背景にある。このままインフレ率が上昇した場合、株式に対してはどのような影響が出るのか? ※投資のプロフェッショナルである機関投資家からも評判のピクテ投信投資顧問株式会社、DEEP INSIGHT。本連載では日々のマーケット情報や政治動向を専門家が読み解き、深く分析・解説します。

税務当局は海外投資・資産の情報をどのように収集しているのか?
口座情報交換制度を踏まえた「海外活用」の進め方 >>9/22(水)開催

一般的に株式はインフレに強い資産

物価に連動しない債券(固定利付債)と違い、一般的に株式はインフレに強い資産である。物価上昇率が高まると、原材料費や人件費など企業のコストが上昇することになるので、企業は収益率の維持を目的に、物価上昇によるコスト増加分を販売価格に転嫁させるからだ。

 

たとえば、売上高が100億円、売上原価が70億円、粗利益が30億円の会社があったとする。物価上昇によって売上原価が10%増加(70→77億円)した場合、企業は売上高(販売価格)を10%値上げ(100→110億円)することによって、粗利益を物価上昇分の10%だけ引き上げることができる(110億円-77億円=33億円〔30億円×1.1〕)。株式は中長期的には企業業績が株価に反映されるので、一般的に物価上昇は株式にとってプラス材料となりうる。

米国の期待インフレ率は上昇傾向

市場参加者が予想する物価変動率である期待インフレ率(10年ブレーク・イーブン。米10年国債利回りから米10年物価連動国債利回りを差し引いたもの)は、足元で上昇傾向にある(図表1)。この背景には、新型コロナワクチンの接種開始に伴う経済の正常化期待や、バイデン米政権による大規模な追加景気対策案などが要因として挙げられる。

 

月次、単位:%(前年比)、期間:2016年1月~2021年1月 ※10年ブレーク・イーブンとは米10年国債利回り-米10年物価連動国債利回りで算出される、市場参加者が予想する物価変動率 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表1]米国期待インフレ率(10年ブレーク・イーブン)と米国CPI(消費者物価指数) 月次、単位:%(前年比)、期間:2016年1月~2021年1月
※10年ブレーク・イーブンとは米10年国債利回り-米10年物価連動国債利回りで算出される、市場参加者が予想する物価変動率
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

ここで注目すべきはインフレ率の水準だ。株式はインフレに比較的強い資産であることは前述した通りだが、インフレ率が2%を超えてくるとS&P500指数の12ヵ月先株価リターンが鈍化する傾向がある。図表2は米国CPI(消費者物価指数、前年比)を4つの範囲でグループ分けし、月次CPI発表月から12ヵ月先の株価リターンを平均化したグラフだが、CPIが前年比で2%以上になると平均株価リターンが鈍化する傾向が見てとれる。

 

株価リターンはS&P500指数を使用、月次、配当無し、米ドル建て 期間:1946年1月~2019年12月 ※月次CPI(前年比)を下記4つの範囲でグループ分けし、月次CPI発表月から12ヵ月先の株価リターンを平均化したグラフ 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米国CPIと12ヵ月先平均株価リターン 株価リターンはS&P500指数を使用、月次、配当無し、米ドル建て
期間:1946年1月~2019年12月
※月次CPI(前年比)を下記4つの範囲でグループ分けし、月次CPI発表月から12ヵ月先の株価リターンを平均化したグラフ
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

なぜ物価水準の違いによって、株価リターンに差が出やすいのか?

一般的に、物価水準が2%未満の時は景気が低迷していることが多いため、積極的な財政/金融政策が打ち出されやすい。結果的に株価リターンも高くなりやすい。しかし、物価水準が2%を超えてくると、今度は物価を抑制させるために金融引き締めが行われるので、おのずと株価リターンも鈍化してしまうと考えられる。また、物価上昇率があまりにも高くなってしまうと、販売数量が減少して企業の売上そのものが減少し、企業業績が悪化してしまうことも想定される。物価上昇は、その水準によって株式に対してプラスにもマイナスにも働きかねないので、今後の推移を注意深く見守る必要がある。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米国で期待インフレ率が上昇?株式への影響は?』を参照)。

 

(2021年2月5日)

 

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社 

運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

\PR/ 年間延べ2000人以上が視聴!カメハメハ倶楽部「資産運用」セミナー

 

【カメハメハ倶楽部のイベント・セミナー】

※<特設ページ>富裕層のためのヘッジファンド活用

 

【9/21開催】「東南アジア不動産」表と裏の顔~正しく投資するための知識とは?

 

【9/21開催】米国の投資家が長期投資に活用!「ターゲット・イヤー型ファンド」とは?

 

【9/21開催】企業オーナー・不動産オーナーのための「プラチナ・カード」の賢い導入法

 

【9/22開催】口座情報交換制度を踏まえた、秘匿性の高い「海外活用」の進め方

 

【9/22開催】現役オーナーも登場!「太陽光発電」現地視察会<バーチャル編>

 

【9/22開催】同じ商品を契約しているのに効果に格差が!?プロも知らない「保険」活用術

 

【9/28開催】フランチャイズ投資を成功させる!事例から学ぶ投資案件の見極め方

 

【9/28開催】知識と使い方次第で価値にも無価値にもなる!「保険の見直し」入門講座

 

【9/28開催】ケーススタディで解説!「ハワイ不動産」の出口戦略

 

【9/28開催】現役ヘッジファンドマネジャーが解説!株式マーケットニュートラル戦略

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

著者紹介

連載PICTETマーケットレポート・Deep Insight

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧