米国がクリーン・エネルギー政策を推進させるうえで欠かせない「Growing Renewable Energy and Efficiency Now(通称GREEN)」法案が、米下院歳入委員会の民主党議員によって提出された。この法案には「税額控除期間の延長・拡充」や「税額控除対象の拡大」などが盛り込まれており、成立すれば米国のクリーン・エネルギー投資にさらに弾みがつくことが期待される。

税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法

>>>12/10(火)LIVE配信

GREEN法案とは何か?

今月5日に米下院歳入委員会の民主党議員によって提出されたGREEN法案は、クリーン・エネルギー投資を促進させる「税額控除期間の延長・拡充」と「税額控除対象の拡大」が目玉となっている。

 

日次、米ドル建て、配当込み、2019年12月末=100で指数化 期間:2019年12月末~2021年2月12日 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表1]クリーン・エネルギー株指数とMSCI世界株指数 日次、米ドル建て、配当込み、2019年12月末=100で指数化
期間:2019年12月末~2021年2月12日
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

「税額控除期間の延長・拡充」は、PTC(生産税控除)とITC(投資税控除)が主な対象となる。PTCは生産開始から10年間、発電量に対してある一定の税額控除が適用されるもので、主として陸上風力で使用されている。現行制度で税額控除の対象となるには、2021年末までに着工を開始させる必要があるが、GREEN法案ではこれを5年間延長して2026年末までとする。

 

一方、ITCは投資額の一定割合を税額控除できる制度で、主に太陽光発電で使用される。同法案では、税額控除率・期間が2025年まで30%、2026年は26%、2027年は22%、2028年以降は10%まで延長・拡充する(現行の制度は2020年から2022年までは26%、2023年は22%、2024年は事業者/電力会社向けが10%、個人向けが0%)。

 

出所:米下院歳入委員会よりピクテ投信投資顧問作成
[図表2]GREEN法案の概要 出所:米下院歳入委員会よりピクテ投信投資顧問作成

 

「税額控除対象の拡大」では、主にエネルギー貯蔵技術をITCの対象とする案が含まれている。具体的には2026年まで税額控除率を30%とし、2027年は26%、2028年は22%と段階的に引き下げられる。

 

これ以外にも電気自動車や省エネ住居向けの税優遇策の拡充などが盛り込まれている。

実はトランプ政権の任期終了間際にも税額控除期間は延長されていた

気候変動対策に後ろ向きとされていたトランプ政権だったが、実は昨年12月に陸上風力のPTCは1年間、太陽光のITCは2年間、それぞれ税控除期間が延長されている。そもそもこれらの税優遇制度の歴史は長く、PTCは1992年、ITCは1978年から施行されている。米民主党/共和党政権にかかわらず、たびたび制度が延長・拡充されてきたのが、クリーン・エネルギー投資にかかる税制優遇策の特徴だ。

 

GREEN法案は、税控除期間の延長以外にも様々な税制改正案が含まれているため、原案通り成立するかは不透明だ。しかし、米民主党が2020年の大統領選、上院・下院選を制する「ブルー・ウェーブ」が実現した今、税制優遇策の延長・拡充等によって、米国がクリーン・エネルギー投資をさらに加速させることができるどうか、このGREEN法案がその試金石となるだろう。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米クリーン・エネルギー政策 注目のGREEN法案とは?』を参照)。

 

(2021年2月15日)

 

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社 

運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

日本経済の行方、米国株式市場、新NISA、オルタナティブ投資…
圧倒的知識で各専門家が解説!カメハメハ倶楽部の資産運用セミナー

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【12/10開催】
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?

 

【12/10開催】
不動産「売買」と何が決定的に違うのか?
相続・事業承継対策の新常識「不動産M&A」とは

 

【12/11開催】
家賃収入はどうなる?節目を迎える不動産投資
“金利上昇局面”におけるアパートローンに
ついて元メガバンカー×不動産鑑定士が徹底検討

 

【12/12開催】
<富裕層のファミリーガバナンス>
相続対策としての財産管理と遺言書作成

 

【12/17開催】
中国経済×米中対立×台湾有事は何処へ
―「投資先としての中国」を改めて考える

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録