きっかけは亡夫の妹との不動産共有
実際にこんなケースがありました。両親と長男・長女の家族の話です。父は数年前に亡くなり、母と長男・長女で一次相続を済ませました。遺産のメインは、1階部分が自宅で、2階、3階部分が賃貸マンションになっているタイプの不動産でした。自宅部分を母と長女が相続し、賃貸マンション部分を長男が相続しました[図表]。
その2年後、長男が若くしてガンで亡くなりました。長男には妻と子が2人います。長男の遺産である賃貸マンションは、妻が相続しました。この時点で、長男の妻と、母と長女の3人が1つの不動産を分け合う形になっています。
実は、おとなしい性格の長男の妻と、勝ち気な長女は以前からあまり仲がよくなく、すでに火種はこの段階からくすぶっていたようです。また、長男の妻は姑である母ともしっくりいっていませんでした。これまで盾になってくれていた夫である長男が亡くなったことで、長男の妻への風当たりは強くなっていきました。母は2人の孫だけはかわいがっていましたが、独身の長女にしてみれば、それもおもしろくなかったのだと思われます。
そして、今回、母が亡くなり二次相続が発生しました。相続人は長女と、長男の代襲相続人である孫2人です。かねてから長男の妻に不満を抱いていた長女の気持ちが、ついに爆発しました。「嫁のくせに親の面倒も見ないで、孫を取り入らせて遺産だけもらおうなんてずるい。母の面倒を最後に見たのは私なのだから、母の遺産は私がもらうのが当然でしょ。孫たちの代襲相続は放棄してもらうわ」と長男の妻に言い放ったのです。
長男の妻は長女に言われるがまま、未成年である子らに代わって、「代襲相続を放棄します」という書類にハンコを押してしまいました。長男の妻は「このままでは、夫から相続した賃貸マンションと土地まで、長女に取り上げられてしまうかもしれない」と危惧して、私のところに相談に来られたのでした。
長男の妻は、「長女はあのような性格だから、母の遺産をよこせと迫ってくることは予想ができた。自分もトラブルは嫌だから、それでいいと思っていた。しかし、実際にハンコを押してみて、それが長女の傲慢さに拍車をかけることになってしまった。長女の怒りの矛先が2人の子におよぶのだけは避けたい」と言っていました。
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