医療技術の発達で、老眼・白内障治療に大きな変化が生まれました。老眼鏡などのメガネをかけるのはできるだけ避けたい、と望む人の声に応えるために生まれた「多焦点眼内レンズ」。ほかの治療法と比べたメリットについて鈴木眼科グループ代表の鈴木高佳氏が解説します。
一長一短の老眼・白内障の治療方法
例えばCKは、手術で高周波を角膜の周辺部に当てることによって角膜のカーブを変形させ、近方にピントが合うようにして老眼を矯正します。手術といっても1分ほどで処置が終わり、リスクも費用も低く抑えられる方法ですが、水晶体は依然として残っているため、手術後も老眼は進行します。また、水晶体が老化すればほぼ100%の確率で白内障が発症しますから、悪化した時点でいずれは白内障手術が必要になります。
レーシック(LASIK)手術で左右の視力に差をつけて遠近両用効果を実現しようとするモノビジョンレーシックも、水晶体の老化を防ぐことができない点ではCKと同様です。手術後も老眼の進行や白内障の悪化は続いてしまうのです。
老眼治療の決定版といえるものがまだ存在していなかったなか、登場とともにその主流となったのが多焦点眼内レンズ手術です。現在では多くの眼科医療機関が「多焦点眼内レンズによる治療」を診療項目に挙げ、ウェブ上でその有効性を盛んに紹介するようになりました。
特に3焦点タイプの多焦点眼内レンズは登場して間もないにもかかわらず、この広がりの早さは目を見張るものがあります。
私は長い間、多焦点眼内レンズを用いた白内障手術を行いながら、自信をもって老眼治療にも用いることのできる多焦点眼内レンズが開発される日を待ち望んでいました。ですから先ほどは「気がつくと――」と書きましたが、個人的には「ようやくここまできた」と、感慨深く3焦点眼内レンズの登場を迎えたのが正直なところです。
鈴木眼科グループ代表
神奈川県逗子市出身。栄光学園中学校・高等学校卒、1994年日本医科大学卒。日本医科大学付属第一病院にて麻酔科研修後、横浜市立大学医学部付属病院眼科に所属する。この間、同大学病院、函館の藤岡眼科病院、小田原の佐伯眼科クリニックへの勤務を通して白内障手術をはじめ眼科一般の経験を積む。
2002年より東京歯科大学市川総合病院眼科にて角膜疾患の診断・治療に携わる。また同年、日本国内での多焦点眼内レンズの厚生労働省治験を行った、東京歯科大学水道橋病院眼科のビッセン宮島弘子教授の助手として同眼科に勤務し、2006年3月まで、手術、診療、臨床研究に従事。同大学ではほかに、レーシックをはじめとする屈折矯正手術と日帰り白内障手術を専門に行う。
2006年国際親善総合病院眼科部長に就任。網膜硝子体疾患に対し手術および内科的治療(光線力学療法、抗血管内皮増殖因子硝子体注射療法など)を導入し、多数の患者の診断と治療を担当。
2010年4月、神奈川県横浜市のJR戸塚駅前に戸塚駅前鈴木眼科を開院。現在は同クリニックの理事長を務めるほか、同クリニックをはじめ県下に計4カ所のクリニックから成る鈴木眼科グループの代表を務める。
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