医療技術の発達で、老眼・白内障治療に大きな変化が生まれました。老眼鏡などのメガネをかけるのはできるだけ避けたい、と望む人の声に応えるために生まれた「多焦点眼内レンズ」。ほかの治療法と比べたメリットについて鈴木眼科グループ代表の鈴木高佳氏が解説します。
多焦点眼内レンズ界に革命
そこへ2019年、米国のアルコン(Alcon)社が新しい3焦点タイプの多焦点眼内レンズとして「パンオプティクス(AcrySof IQ PanOptix Trifocal)」の販売を開始しました。
このレンズは3焦点であるという最大の長所以外にも、明るさの変化に影響を受けにくく、遠方・中間距離・近方のすべてにおいて光エネルギーを効率的に網膜へ届けられるよう設計されています。
このことにより、術後に裸眼で生活できる可能性が大きく広がったことが、私にとっては「待ちに待った」と言いたいような喜びでした。
老眼・近視・遠視・乱視を治療する多焦点眼内レンズ手術は、このパンオプティクスの登場によって実際上、完成されたといっても大げさではありません。私自身、実際に執刀医の立場で、このレンズを手術で使用した方の術後の高い満足度を目の当たりにして、これまでのどの多焦点眼内レンズをもしのぐ性能を実感しています。
少なくとも私が「これなら白内障の治療のみならず、老眼・近視・遠視・乱視を解消する手段としても自信をもって患者さんにすすめられる」という考えに達したのは、パンオプティクスを使用した手術の結果に確かな手応えを感じたからなのです。
鈴木 高佳
鈴木眼科グループ代表
鈴木眼科グループ代表
神奈川県逗子市出身。栄光学園中学校・高等学校卒、1994年日本医科大学卒。日本医科大学付属第一病院にて麻酔科研修後、横浜市立大学医学部付属病院眼科に所属する。この間、同大学病院、函館の藤岡眼科病院、小田原の佐伯眼科クリニックへの勤務を通して白内障手術をはじめ眼科一般の経験を積む。
2002年より東京歯科大学市川総合病院眼科にて角膜疾患の診断・治療に携わる。また同年、日本国内での多焦点眼内レンズの厚生労働省治験を行った、東京歯科大学水道橋病院眼科のビッセン宮島弘子教授の助手として同眼科に勤務し、2006年3月まで、手術、診療、臨床研究に従事。同大学ではほかに、レーシックをはじめとする屈折矯正手術と日帰り白内障手術を専門に行う。
2006年国際親善総合病院眼科部長に就任。網膜硝子体疾患に対し手術および内科的治療(光線力学療法、抗血管内皮増殖因子硝子体注射療法など)を導入し、多数の患者の診断と治療を担当。
2010年4月、神奈川県横浜市のJR戸塚駅前に戸塚駅前鈴木眼科を開院。現在は同クリニックの理事長を務めるほか、同クリニックをはじめ県下に計4カ所のクリニックから成る鈴木眼科グループの代表を務める。
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