子どもの「視覚機能」の低下が引き起こす様々な影響
よく見える環境は、子どもの成長にとても大切なことです。例えば、水族館にはいろいろな種類の魚が泳いでいます。これらの魚の形がはっきりと見えれば、子どもはワクワクして「何という魚だろう」とか「面白い泳ぎ方をしている」とか、興味が湧いたりします。
ほかにも、外に出れば季節ごとに咲く色とりどりの花に目を留めたり、空を見上げて鳥が飛んでいたり雲が流れる様子を目で追いかけたりします。街中では電車や車を飽きずにずっと見ていたり、面白い看板を見つけると足を止めたりなど、見えるからこそ小さな発見があり、気づくことがたくさんあります。
こうして子どもの見える範囲を広げてあげることは、さまざまな情報をキャッチして興味や好奇心を刺激することとなります。目を通して多くの物事に関心をもつことで脳を刺激し、子どもは成長していきます。ですから、目を育てることは、脳を育てることにもつながります。
視覚機能は、外界からの情報をきちんと認識して脳で処理する入り口にあたるため、見えづらいと興味が湧きません。これが、集中力や思考力の低下を招き、学力や運動能力に支障をきたすこととなります。
学校では、黒板や教科書、ノートが見えづらくなると、授業内容が頭に入らなくなったり、計算間違いや漢字を書き間違えたり、行を飛ばして本を読んでしまったりすることが増えてきます。運動では、距離感がつかみにくくなるので目測を誤るなどして、思うような結果を出せなくなります。ですから視覚機能の低下は、子どもの活躍の妨げになると考えられます。
それだけではありません。見えづらいことが原因で起こっているにもかかわらず、時には学習障害(LD)やADHD(注意欠如・多動症)などと診断されるケースもあるのです。
学習障害とは、読み書き能力や計算力などの算数機能に関する、特異的な発達障害の一つです。ADHDは、年齢あるいは発達に不相応に、不注意、落ちつきのなさ、衝動性などの問題が生活や学業に悪影響を及ぼし、その状態が6ヵ月以上持続していることと定義されています。
もちろん、すべての問題が視覚機能の低下から来ているわけではありませんが、見えづらいことで生じる不都合が、別の病気と誤解されることもあるのです。こうなると、子どもは自信喪失に陥り、心身の健全な成長を阻まれかねません。
ですから、子どもの好奇心や才能の芽を伸ばし、心身ともに健やかに成長させるためにも、しっかりと目と脳の発達を促す環境を整えることが大切です。
星合繁
ほしあい眼科院長
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