「まばたき」の回数が減少すると?
現代社会はIT化が進み、目を酷使する生活環境になっています。
パソコンやタブレット、スマートフォン、TVゲームなどを長時間使用することによって目の疲れ、充血、ドライアイなどを引き起こすだけではなく、座ったまま同じ姿勢をとっていることで首・肩・腕・手・腰の筋肉の緊張状態が続いてコリや痛み、頭痛、吐き気、食欲不振といった身体的症状を訴える人も増えています。
さらに、自律神経のバランスが崩れることで、ストレス、不安感、イライラなど精神的症状にまで及んでいるケースも見られます。
このような状態を「IT眼症」とか、「VDT(Visual Display Terminal)症候群」「テクノストレス眼症」といって、まさにIT社会が生み出した新たな目の病気として問題視されています。
通常、まばたきは約3秒に1回のペースでしています。これが、読書をしているときは約6秒に1回、さらにパソコンを使っているときは約12秒に1回、人によっては2~3分に1回にまで減少するといわれています。
まばたきの回数が減れば、そのぶん涙が蒸発しやすくなるのでドライアイを引き起こします。そうなると角膜が傷つきやすくなり、角膜障害を起こすリスクが高まります。
また、睡眠前にパソコンやテレビを見ていると、脳が緊張状態に陥るため寝つきが悪くなり、睡眠時間が減ることで目を休める時間も少なくなります。これによって目の疲れが回復しないまま朝を迎えることとなり、慢性的な眼精疲労を引き起こします。
問題は、このIT化が子どもの世界にも及んできていることなのです。子どもの場合は、角膜を覆っている涙の膜がしっかりしているため、多少はまばたきの回数が減っても問題はないと思われます。
けれども、限度を超えれば当然、大人と同様に症状が現れてきます。そのうえ、パソコンやスマートフォンが他人とのコミュニケーションの手段になることで、直接相手と話す機会が失われつつあります。
これによって相手の目を見て表情から真意をくみ取るなど、人間関係の基本となるコミュニケーション能力が低下し、感情表現をうまくできないなど精神的・知的発達に大きな影響を与えることが懸念されます。
今後、ますますIT化は加速していくことでしょう。子どもの時期からIT機器を使いこなせるようにしなければ、グローバル社会では生きていけないのかもしれません。それは仕方のないことであり、筆者も否定はできません。
しかし、このような環境は眼科医として、子どもの目のためには良くないと考えています。ですから、子どもの目の正常な発達を妨げないようなIT機器の使い方を、親には工夫していただきたいと思います。
そこで、子どものIT眼症を防ぐために推奨されている、次のことに注意して家庭では実践していただくことを期待しております。
● 長時間のIT機器の使用は避け、50分以内にする。
● 50㎝以上離れてもラクに見える画面の大きさのIT機器を選ぶ。
● IT機器は50㎝以上離れて見る習慣をつける。
● IT機器以外のものに興味をもたせる。
● 親が子どもと積極的に話をする機会をつくる。
いまやIT機器を使わない生活は困難と言わざるを得ない状況です。そうであるなら、上手に活用して生活を豊かにするためにも、目に負担をかけない使い方を工夫して予防するしか方法はありません。
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