「視力低下」の原因を特定するためには「検査」が必要
学校健診で子どもの視力が落ちていることが分かったとき、親としてどのように受け止めるでしょうか。おそらく「近視になった」とか、すでにメガネをかけている場合は「近視が進んだ」「メガネが合っていない」と考えることでしょう。
けれども、「視力低下」という一つの症状をとってみても、考えられる目の病気には逆さまつげ、網膜色素変性症、ぶどう膜炎、心因性視力障害、弱視などたくさんあります。メガネの調整や点眼薬で済むケースもあれば、早急に治療しなければならない危険な病気が潜んでいるケースもあります。
もしも危険な病気だった場合、近視が進んでいると判断して治療を受けずにいたなら、子どもの視力の発達が妨げられて、生涯、視力の回復が望めなくなる可能性も出てきます。
このようなことが起こらないようにするには、まず視力低下の原因がどこにあるのかを明らかにする必要があります。視力の低下は、良好な視力を保つために非常に重要な角膜、水晶体、網膜、視神経に異変が起こることが多いので、これらのどこに異常があるのかを知ることが重要です。それには検査が必要不可欠なのです。
症状は、異常を知らせるサインです。そのサインを手掛かりにして検査を通して原因を追求し、病気を特定していきます。そうして病気の診断を確実にしていくことが検査の大きな目的ですが、それだけではありません。
病気が特定できたときは、治療方針を決める手助けになったり、病気が重いか軽いかの判定、治療の経過や回復の度合いを確認するなど、検査はさまざまな状況で活用されています。
身近なところでは、風邪のような症状が出ていても、それが単なる風邪なのかインフルエンザなのか、あるいは新型コロナウイルスに感染したのかは分かりません。それぞれで治療法が異なるため、診断を間違えれば処方する薬が違ってきますから、効果が出ないばかりか、病状を悪化させる危険があります。重要なのは病気を特定することです。
ですから眼科でも、視力低下という症状で受診した患者さんに対しても「屈折異常による近視」と最初から決めつけて診るのではなく、問診や視診から別の病気も考慮していくつか予測します。
それを打ち消していき、ある病気の疑いが濃くなってきたときには、病気を絞り込んで診断につなげるための検査を行います。特に子どもの場合は、診断を誤ると視覚機能に影響するだけに、より慎重に診ていく必要があります。
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