●東証は昨年12月、新たな3市場への上場制度や、TOPIX等の見直しに関するプランを公表した。
●新市場選択の手続きや上場維持基準に関する経過措置のほか、TOPIXの新ルールも示された。
●流通株式時価総額に関しTOPIX退出基準も設定、第三次制度改正事項は春以降に公表へ。
東証は昨年12月、新たな3市場への上場制度や、TOPIX等の見直しに関するプランを公表した
2020年7月31日付レポート『東証の市場改革~現時点でのアップデート』では、東京証券取引所(以下、東証)が2018年から着手している市場改革の進捗を解説しました。その後、東証は2020年12月25日、「市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について(第二次制度改正事項)」および「TOPIX(東証株価指数)等の見直しについて」を公表しました。今回のレポートでは、それぞれのポイントを確認します。
まず、第二次制度改正事項では、現行の「市場第一部」、「市場第二部」、「マザーズ」、「ジャスダック」の4市場区分が、「プライム」、「スタンダード」、「グロース」の3市場区分へ移行する時期は、2022年4月4日であることが明示されました。また、上場にあたっての厳格な審査基準を設け(図表1)、市場で実際に売買できる「流通株式」を重視する観点から、流通株式の定義を見直す方針が示されました。
新市場選択の手続きや上場維持基準に関する経過措置のほか、TOPIXの新ルールも示された
上場企業は、2021年9月1日から12月30日までの間に、プライム、スタンダード、グロースのいずれかの市場区分を選択して東証に申請し、東証は申請を踏まえて新市場区分を決定する流れとなります。また、上場維持基準に関する経過措置として、別途定めた移行区分(市場第一部からプライム市場もしくはスタンダード市場への移行など)に該当する上場企業には、当分の間、緩和した上場維持基準が適用されます。
次に、TOPIX(東証株価指数)等の見直しについては、TOPIXをはじめとする主要株価指数に関する基本方針が示されました(図表2)。TOPIXは、新市場区分の上場制度施行日(2022年4月4日)以降も継続して算出され、構成銘柄は、移行先の新市場にかかわらず、同施行日の前営業日(2022年4月1日)時点の銘柄となります。また、流通株式時価総額の一定基準を満たさない銘柄は、TOPIXへの影響度が段階的に引き下げられます。
流通株式時価総額に関しTOPIX退出基準も設定、第三次制度改正事項は春以降に公表へ
流通株式時価総額の一定基準を満たさない銘柄とは、2022年4月1日時点で、①2021年6月30日を基準とする「新市場区分における上場維持基準への適合状況の通知」における流通株式時価総額が100億円未満で、かつ、②この①の判定に用いた決算期の翌期末で流通株式時価総額100億円未満の銘柄です。これらは、2022年10月31日から四半期ごとの最終営業日に10段階で構成比率が調整され、2025年1月最終営業日に除外されます。
なお、以上の方針は、まだ確定ではなく、東証は現在、2020年12月25日から2021年2月26日までの期間を設けて、意見募集を行っています。また、新市場区分における上場制度のうち、コーポレートガバナンス・コードの内容や、上場料金などについては、「第三次制度改正事項」として、2021年春以降の公表が予定されています。こちらも公表後、改めて内容を確認します。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『東証の市場改革アップデート(2021年2月)』を参照)。
(2021年2月3日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト