毎年必ず社長は歳をとります。それに伴い気力も体力も衰え、いずれは引退を余儀なくされます。おそらくこの先の10年間で社長が引退し、後継者が新社長として就任する会社が一斉に増えるでしょう。*本連載は藤田耕司著『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋し、再編集したものです。

「経営がわかる人に相談」経営参謀ニーズが顕在化

事業承継が経営の大きな節目になる

 

日本が迎えている「少子高齢化」「グローバル化」「機械化」の3つの潮流がありますが、特に少子高齢化に関連して、この参謀の重要度は増していきます。

 

日本の経営者の平均年齢をみなさんはご存知でしょうか。東京商工リサーチの2018年の調査によると、経営者の平均年齢は61.7歳とされています。

 

中小企業庁によると、経営者の平均引退年齢は70歳とされ、その70歳を超える中小企業の経営者は2028年頃までに約245万人にのぼり、その約半数の127万人は後継者が未定であると見込まれています。日本の企業数が約400万社といわれているため、この数は日本企業全体の約3分の1となります。現状を放置すれば、中小企業の廃業により、累計約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があると指摘されています。

 

毎年必ず社長は歳をとる。 (画像はイメージです/PIXTA)
毎年必ず社長は歳をとる。
(画像はイメージです/PIXTA)

 

毎年必ず社長は歳をとります。それに伴い気力も体力も衰え、いずれは引退を余儀なくされます。おそらくこの先の10年間で社長が引退し、後継者が新社長として就任する会社が一斉に増えるでしょう。その際、「先代の下で長年会社の経営に携わってきた」という後継者なら頼もしいですが、そのような後継者ばかりではありません。

 

特に中小企業では「先代社長の子供だから」という理由で、経営の知識も経験もないまま社長になるケースも多く、今後、事業承継が一斉に起きれば、経営を知らない社長が一気に増える可能性があります。

 

近年、後継者不在が原因の解散や廃業、経営を知らない後継者への事業承継が原因と思われる業績低迷や倒産が急激に増えており、こうした事例は今後さらに増えるでしょう。

 

日本企業の99.7パーセントは中小企業ですが、多くの中小企業がこの事業継承のリスクを抱えており、顕在化すれば日本経済は大きなダメージを受けるおそれがあります。このように、事業承継の問題は、今後の日本が避けて通れない重大な問題です。

 

この社会情勢を考えれば、後継者の経営力の養成や、経営の助言ができる経営参謀の育成は、日本の喫緊の課題だといえます。この課題に対する取り組みとして、私は後継者や経営参謀をめざす方、特に士業の人たちに心理学と感情の性質に基づいて経営を改善する経営心理学をお伝えしています。

 

高まる経営参謀へのニーズ

 

これまで多くの後継者に接してきてつくづく感じるのは、「後継者はつらい立場にある」ということです。先代が築き上げた事業の引き継ぎは、場合によってはゼロから会社を興すよりも大変だといえます。

 

後継者は、自分がやりたい事業かどうかにかかわらず、多くの従業員の生活への責任を負います。先代が気に入って採用した従業員でも、後継者にとっては合わない場合もあります。先代の借金があれば連帯保証人になり、まだ深い信頼関係がない複数の利害関係者とのしがらみの中で、さまざまな決断を迫られます。経営の力量も常に先代と比較され、先代より劣るとみなされると「先代の頃は良かったのに」と周囲から批判されます。

 

一方で、そのような会社の中に、後継者に的確な経営の助言ができる経営参謀と呼べる人がはたしてどれほどいるでしょうか。私のコンサルティング先の多くは2代目、3代目の後継者であり、「経営がわかる社外の人に経営について相談したい」というニーズを強く感じています。このように、経営者の高齢化による事業承継が進めば進むほど、経営参謀に対するニーズは高まっていくでしょう。

 

藤田耕司
一般社団法人日本経営心理士協会代表理事
FSGマネジメント株式会社代表取締役
FSG税理士事務所代表
公認会計士、税理士、心理カウンセラー

 

 

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経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

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藤田 耕司

日本能率協会マネジメントセンター

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