医師の皆さんは、リタイアまでに払う「医療保険料の総額」をご存じですか? 平均年収は1200万円と文句なしの高給職でも、リタイア後は想像以上に「お金がない」のが実情です。安泰の老後生活を送るためにはどうすればいいか。真っ先に思い浮かぶのは「現役のうちにできる限り稼いで貯める」ということでしょう。しかし医師は高収入ゆえにお金の管理が甘いもの。結局、支出を見直さなくては貯まるものも貯まりません。ここでは医師が見直すべき項目の1つ、「医療保険料」を解説します。

「社会保障の恩恵が薄い」医師たちの医療保険事情

医師は高収入が得られる職業ですが、その一方で老後に不安な要素もたくさんあります。一般サラリーマンと比較して社会保障の恩恵が薄い、就業先の退職金制度が整っていないなど前途多難です。そして退職後は生活資金の確保のみならず、万が一の事故によるケガや病気への備え、すなわち医療保険への加入も必要です。

 

日本には加入が義務付けられている公的医療保険と、民間の保険会社が提案する数多の医療保険がありますが、それぞれのメリット・デメリットを知り、医師に相応しい医療保険を見極めることが必要です。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

総額4000万円…年収1200万円の医師が払う医療保険料

【公的医療保険】

 

日本では公的医療保険への加入が義務付けられています。一人暮らしを始めて世帯主になったとき、または就職した時に、親の加入医療保険から離れて自分名義で保険料を支払いはじめることになります。大規模病院の勤務医であれば「健康保険(社会保険)」に、また従業員5人未満の小規模病院の勤務医や開業医であれば「国民健康保険」へ加入することになります。ここで気になるのは保険料です。たとえば、年収1200万円で東京都在住の35歳独身医師が1年間に支払う公的医療保険料はいくら位になるのでしょうか。

 

●大規模病院勤務の場合(健康保険加入):年額約61万円(月額約5.1万円×12ヵ月)

●開業医・小規模病院勤務の場合(国民健康保険加入):年額63万円(課税限度額)

※上記はいずれも39歳までの保険料で、40歳になったらこれに介護保険料が加わります。

 

次に、上記それぞれの保険料をベースに就業期間中(20歳から64歳までの44年間)の支払い総額を算出してみました。

 

●健康保険料支払い総額:年額61万円×44年=約2684万円+介護保険料

●国民健康保険料支払い総額:年額63万円×44年=約2772万円+介護保険料

 

就業期間中に支払う保険料総額はおおむね3000万円程度であることがわかります。いずれも収入額に対して課税されるものですから、高額になってしまうのは仕方ありません。

 

もう一つ、医師向けの公的医療保険として「医師国民健康保険」があります。加入できるのは医師会会員である開業医、または医師会会員で従業員5人未満の小規模病院に勤務する医師で、この医師国民健康保険か国民健康保険のどちらかを選んで加入することになります。医師国民健康保険の保険料は年齢や収入に関係なく一律月額3万2500円(40歳以降は介護保険料加算あり)で、就業期間中の支払い総額は約1700万円(年額39万円×44年間=1716万円)なので、国民健康保険に加入するより1000万円以上割安になります。

 

 

【民間医療保険】

 

公的医療保険に併せて、民間保険会社の医療保険(以下、民間医療保険)に加入している人も多くいます。年収1000万円以上の高額所得者では8割以上が加入しており、そのうち5割以上が年間23万円前後の保険料を支払っています。そこで、前述の35歳独身医師が民間医療保険に加入していた場合、就業期間中に支払う民間医療保険の総額がいくらになるかを算出してみました。

 

民間医療保険料支払い総額:約23万円×44年=1012万円

 

もし公的医療保険と民間医療保険の両方に加入していたら、就業期間中に総額4000万円(公的約3000万円+民間約1000万円)以上の医療保険料を支払うことになります。そこで検討すべきことは、果たして公・民両方の医療保険に加入する必要性はあるのか?ということです。

「数十万円の給付金」に1000万円以上を費やす無意味

もしケガや病気で入院したら、公・民の各医療保険からどの位の給付金が受け取れるのでしょう?

 

民間医療保険の場合は加入している保険の契約内容によってまちまちですが、入院給付金の平均額は日額1万円~1.5万円、月額換算で31万円~46.5万円程度受け取れるようです。

 

一方、公的医療保険の場合は、自己負担額が1ヵ月分の上限額を超えた場合、その超えた金額分を差し引いた額が支払われる仕組み(高額療養費制度)になっています。

 

たとえば前述の35歳独身医師が入院し、自己負担額50万円の医療費がかかった場合に支払われる給付額は以下のようになります。

 

1ヵ月分の上限額:25万2000円+(50万円-8万4200円)×1%=25万6020円

月額給付額:50万円-25万6020円=24万3980円

 

入院時は、この2つの保険の給付金合計額50万円~70万円前後が受け取れることになりますが、数十万円程度の給付金のために一体いくらの保険料を支払ってきたかを考えると疑問が湧いてきます。加入義務がある公的医療保険は仕方ないとして、民間医療保険加入については再考の余地があります。

 

そもそも民間医療保険は現金や預貯金などの手持ちが少なく、入院先から医療費を請求された際すぐに支払いができない場合に役に立つ保険です。年収1200万円の人が、人生で何度もない入院時に数十万円の医療費が支払えないことがあるでしょうか? 手元に資産がある人なら公的医療保険だけで十分足ります。民間医療保険に加入する余剰金があるのなら、そのお金を資産運用に回した方が利口ではないでしょうか。

 

<まとめ>

公的医療保険料への加入は国民の義務なので免れませんが、民間医療保険に加入している人は再検討をおすすめします。60代の入院リスクは30代と比較して2倍以上増加するという調査データもあるようですが、それにしても医師ほどの高額所得者が月額数十万円の医療費を即金で支払えないような状況は考えにくいことです。利用価値のない民間医療保険に1000万円も掛け捨てることを考えたら、不動産投資など別の形で資産運用を考えた方が賢明です。

 

 

大山 一也

 

 

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