いつの時代もなくならない遺産争い。「長男だから」「介護をしていたから」それぞれの立場で権利を主張し続け、ドロ沼の相続に…といった例が後を絶ちません。円満に、とは言わずとも、どうにか丸く収める方法はないのでしょうか? たった一つの「大切なこと」は…。

恐ろしい…「義務を伴わずに権利だけを主張する」

こうして時間をかけた説得の末、無事、話し合いがまとまり、相続税の申告を終えることができました。当初は調停や裁判に発展しかねない可能性もあったため、Cさんから「見事な采配であった」と大変喜んでもらえました。

 

相続対策は時代とともに中身が変化してきています。バブル時代は「節税」が中心でしたが、Cさんの事例にもあるように現在は「分割問題」にシフトしています。

 

高度経済成長を経てバブル経済に突入した時代は、土地建物の値上がりで相続税を支払う人の割合が急増しました。財務省によると、高度経済成長後の1975年における相続税の課税割合は2.1%でしたが、バブル真っ只中の1987年は7.9%まではね上がっています。こうしたことから、バブル時代は相続対策のなかでも「節税」が急務となったのです。

 

同時に、相続税の納税資金を準備するという、「資金繰り」の問題も新たに発生した時代です。バブル時代に相続税の対象者が急激に拡大したことから、その後、基礎控除の引き上げや特例措置が拡充し、対象者を抑制する改正が行われました。これにより、2011年時点の課税割合は4.2%まで減少しました。

 

他方、バブル経済が崩壊して長引く不況に突入し、相続税がかかるほどの財産を残せる人が徐々に少なくなってきています。しかし、財産が少なければ相続問題も起こりにくくなるのかといえば、決してそうではありません。むしろ財産が少ない家庭のほうが「争続」に発展しやすいといえます。

 

たとえば、土地建物やその他の資産が財産の中心の場合、相続人が取り分を主張し合って話がこじれるケースが少なくありません。その結果、現在は相続対策のなかでも「分割問題」が中心になってきているのです。

 

分割問題が起きる背景には、権利意識が強くなってきている昨今の状況もあるように思います。権利の主張には義務が伴いますが、最近は義務を伴わずに権利だけを主張する風潮が強くなってきてはいないでしょうか。そうした時代の風が、兄弟間でもお構いなしに財産の取り分を主張するという、分割問題を助長しているように感じます。

 

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※本記事は書籍『相続大増税の真実』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再構成したものです。最新の法令・税制等には対応していない場合がございますので、予めご了承ください。

相続大増税の真実

相続大増税の真実

駒起 今世

幻冬舎メディアコンサルティング

2013年度の税制改正による「基礎控除の4割縮小」と「最高税率の引き上げ」で、これまで相続税とは無縁と思っていた一般家庭にも、相続増税の影響が直撃する可能性がでてきました。 「今すぐ節税をはじめなければ、とんでもな…

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