母親の遺言書を見た妹が豹変
■ダイヤモンドの指輪が「争続」の引き金に
「お姉さんだけもらうなんて私は許せない。換金し、現金で分けるのが筋だ」――。
地方都市の郊外で幸せな家庭を築いていた専業主婦のAさんは、母親の死後、強い口調で主張する妹の剣幕に圧倒され、内心穏やかではない日々を過ごすことになりました。
事の発端はAさんの亡くなった母親が残した遺言書です。サラリーマンだったAさんの父親は数年前に他界し、その後、両親の近くで賃貸マンションを借りて暮らしていた長男家族が実家に戻り、体調がよくなかった母親の面倒を看ることになりました。
長男夫婦は母親の献身的な介護を行い、大きなトラブルもなく生活を続けていました。しかし数年後、父親のあとを追うようにして母親が亡くなりました。
Aさんの兄妹は、長男と、長女である専業主婦のAさん、次女の3人です。母親の死後、兄妹で協力し合って相続手続きを行っている最中、遺言書が見つかりました。そしてその遺言書が相続争い、いわゆる「争続」の引き金を引いてしまったのです。
相続財産は自宅の土地と建物が中心で、現預金は数百万円ほどでした。それに加えて、いくつかの財産があります。
まず自宅の土地と建物は長男が相続することになりました。母親の遺言書にもそのように記されていたのに加えて、長男が家を引き継ぐという昔の家長制度の考えが漠然と残っていたからです。
ところが、財産の存在を知った途端、妹の表情が変わりました。母親が大切にしていたダイヤモンドの指輪を姉に渡すと遺言書に書かれていたのです。
妹はその遺言書に納得がいきませんでした。なぜなら、Aさんは結婚資金を親に融通してもらいましたが、妹は自分の貯金を切り崩して結婚式をあげていたからです。その不満を引き合いに出し、「お姉さんだけがもらうなんて許せない。ダイヤモンドの指輪は売り払い、現金化して分けるべきだ」と強く姉に迫りました。
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