「長男なんだから当然だろ」プライドを捨てられず…
今回のケースは遺言書が残されていなかったため、相続人同士で遺産の分け方を話し合う必要がありました。そこで税理士の私が相続人の間に入り、それぞれの事情に耳を傾けたうえで、遺産分割の案を作成する相談に乗ることになったのです。
今回はCさんの言い分を斟酌しない限り、トラブルなく話し合いを進めるのは難しいと考えました。よってCさんの気持ちを推し量りながら、言い分にじっくりと耳を傾けたのです。主な内容はすでに述べた通りです。
一方、長男の言い分は、「自分は長男だから喪主を務めるのは当然で、相続財産も均等に分けるのが筋」というものでした。
ひと通り相続人の話を聞いたあと、私は長男に「いままでのことを斟酌して、相続財産の多くをCさんに渡してほしい」と切り出しました。
長男は大企業に就職して転勤を繰り返し、実家になかなか帰省できなかったという事情はたしかにあるでしょう。しかしCさんは妻と共に両親の面倒を看ながら、家と仏壇をしっかり守ってきたのです。そうした事情、つまり寄与分を斟酌しない限り、Cさんの気持ちは収まらないと長男を説得しました。
寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合、通常の法定相続分よりも上乗せして与えられる遺産額のことです。たとえば被相続人の商売を手伝ったり、Cさんのように被相続人の介護に専念するなどした場合に認められる場合があります。
財産の分割問題では、この寄与分をめぐって話し合いがこじれるケースが少なくありません。今回のケースではCさんの気持ちをくみ取り、寄与分を考慮に入れなければ問題は解決しないと考えました。
さらにCさんの感情を静めるため、長男に対して「いままで本当によくやってくれたとCさんに頭を下げてください。そのうえで、これからもCさんに仏壇を守ってほしいなら、気持ちを込めてお願いをしてください」と伝えたのです。
長男にもプライドがあるため、当初は「そんなことはできない」と頑なな態度をとっていました。ですが、「Cさんに頭を下げないとこの話はまとまらないばかりか、調停や裁判になれば高くつきますよ」と時間をかけて何度も説明し、ようやく納得してもらえたのです。
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