
「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。連載「見つめてひらめく介護のかたち『楽しむ介護』実践日誌」の著者の黒川玲子さんに在宅で介護を続けている認知症の父「じーじ」の近況報告をしてもらった。連載特別編をお届けします。
持続化給付金を借りて分譲住宅購入をたくらむ?
奇襲!分譲住宅購入星人
朝から「NHKに頼まれた(本人曰く)」という自分史の執筆に余念がないじーじ。書き始めて何年も経つが、いまだ終わらないのには訳がある。
それは、じーじが書く→準夜勤ちゃん(じーじの孫)がPCに打ち込み原稿用紙版に印刷する→印刷された物をじーじが読む→気に入らない→原稿用紙を切り刻んで、修正をするために切張りをする→バラバラになって訳が分からなくなる。この繰り返しだからなのである。

じーじが、PCで仕上げた原稿用紙を切り刻んでは張り付けて校正らしき作業をしている様子を、私は「じーじ版コピペ作業」と呼んでいる。
執筆中、じーじが認知星人に変身する確率は低い。こちらは平和な時間を過ごせるのでありがたいと思っていたところ、事件は起こった。
「おい! あの家は買ったのか?」
先日来、じーじがとても気になってる近所の分譲住宅のことだ! なんてこった。まだ覚えていたのか! 奇襲攻撃をくらったものだから、「へ? 買ってないよ!」と、あまりにもドストレートな返事をしてしまった。ま、まずい……! が、時すでに遅し。
「なんでだ!」
明らかに、怒りん坊星人に変身している。
「今なら、返済しなくても金が借りられるんだ」
返済しなくても済むならお金を借りるとは言わんだろう、と心の中で思ったが、そこはあまり気にしない。
「こんなチャンスに家を買わないなんて、お前は、本当に世の中のことを知らんな。なんなら俺が借りてやってもいいぞ。どうせ返さなくていい金だ!」と、なんだか家を買う気満々なのである。
「ほら、ここに書いてあるからよく勉強しろ!」と言い放ったじーじの手には、持続化給付金についての新聞の切り抜きがあった……。
「そ、それは、家を買うためは使えないかも……もう一回よく読んでみて」というと、真剣に読みだしたじーじ。しばらくすると、自室から、「上海帰りのリル」を歌うじーじの声。
新聞の記事に納得したのか? 読んでいる間に、家を買うこと言ったことを忘れたのか、真実は謎なのである。

黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者
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