平均余命まで約10年…80歳も資産運用が必要という過酷な現実

80歳以上の世代においては、積極的な資産運用を控えたほうが安全・安心であるというのが一般的な考え方ではないでしょうか。80歳の男性の平均余命は9.2年、女性は同12.0年。このような時間においても、リスク資産をゼロにした運用ではインフレリスクに不安が残るという現実があります。資産運用会社のアライアンス・バーンスタイン株式会社で運用戦略を行う後藤順一郎氏が解説します。

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「もはや積極的に運用する局面ではない」は本当か?

寿命が長くなったとはいえ、さすがに80歳から先の人生はそれほど長くはありません。厚生労働省の「令和元年簡易生命表」を見てみると、80歳の男性の平均余命は9.2年、女性は同12.0年となっています。このように期間が限定されてくると、資産を増やすために現役世代から活用してきた複利効果(リターンがリターンを生む効果)もあまり効かなくなるため、「もはや積極的に運用する局面ではない」との考えに異論を挟む人は少ないでしょう。

 

では、いっそのこと株式等のリスク性資産の比率をゼロにしてしまうのが良いのでしょうか? 

 

私は、それはむしろ不適切だと考えます。なぜなら、ある程度株式等に投資しなければ、インフレが起こったときに対処できなくなるからです。

インフレに対抗できない、現在の公的年金の仕組み

80歳にもなれば完全に引退し、公的年金以外の収入がない人も多いでしょう。日本の公的年金にはもともと「物価スライド」という機能があり、インフレが起こればその分、年金額が増えていたので、公的年金だけでも安心して生活できていました。

 

しかし、「マクロ経済スライド」という世代間の調整が行われている現時点では、インフレで物価が上がっても、年金額は十分には増えない仕組みになっています。したがって、別の方法、つまり資産運用でインフレに対応する必要があるのです。

 

長らくデフレが続いてきた日本で、インフレを気にする必要があるのか、と疑問に思う人もいるかもしれませんが、シニア世代にとってインフレの影響は現役世代よりも大きくなっていると思われます。なぜならば、シニア世代の支出の多くを占める食料や医療費などのインフレは、全体のインフレよりも高いからです。

 

実際、2015年を100とした場合、全体を表す消費者物価指数の総合は1.8%とマイルドに上昇した程度ですが、食料は4.3%、保健医療は4.0%も上昇しています。逆に、家庭用耐久消費財(家電)は▲1.6%、教養娯楽用耐久財(テレビやパソコン)は▲3.6%となっており、家電やテレビ・パソコンなどの買い替えが必要な現役世代にとっては価格が下がり、買いやすい状況となっています。

 

このように、年金額がインフレほど増えない中で、食費や医療費がそれ以上に上がってしまうことは、まさに「インフレ・リスク」が顕在化していると言えるでしょう。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

アライアンス・バーンスタイン株式会社 運用戦略部マネジング・ディレクター 兼 AB未来総研所長
慶應義塾大学理工学部 非常勤講師

2006年4月に入社。現在、マルチアセット戦略のプロダクト担当。また、DC・NISAビジネスの推進及びAB未来総研にて顧客向けソリューション/リサーチ業務も兼務。

入社以前はみずほ総合研究所株式会社(みずほフィナンシャルグループから出向)に勤務、主として企業年金向けの資産運用/年金制度設計コンサルティングに従事。

共著書に「年金基金の資産運用-最新の手法と課題のガイドブック-」(2004年、東洋経済新報社)、「企業年金の資産運用ハンドブック」(2000年、日本法令)、「The Recent Trend of Hedge Fund Strategies」(2010年、Nova Science Pub Inc, 2010)。

論文に「ヘッジファンドのスタイル分析-ファンドオブヘッジファンズの超過収益獲得能力の推計-」(2007年、日本ファイナンス学会第15回大会)、「これだけは押さえておきたい資産形成のポイント」(2011年、投資信託事情)、「行動ファイナンスから見た“マーケットとの付き合い方”」(2012年、投資信託事情)、「基礎から分かるターゲット・イヤー・ファンド」(2014-2015年、ファンド情報)など。

1997年に慶應義塾大学理工学部管理工学科にて学士号、2006年に一橋大学大学院国際企業戦略研究科にて経営学修士号(MBA)取得。

日本アクチュアリー会準会員、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、国際公認投資アナリスト(CIIA)、1級DCプランナー、慶應義塾大学理工学部非常勤講師

著者紹介

連載人生100年時代を生き抜くための「ライフサイクル投資」実践講座

※本記事は「ニッキン投信情報」に掲載されたコラムを転載・再編集したものです。

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