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若者がリスクを取れるのは「投資期間が長い」から?
一般的に若年世代の運用戦略というと、「若者は投資期間が長いので、ほかの世代よりリスクを取った運用ができる」と考えている人も多いのではないでしょうか。しかし、実は投資期間と取れるリスク水準のあいだには明確な関係はないのです。
最適な資産配分は、「リスク(分散)を抑えつつ、リターンを最大化する資産配分」と言い換えることができます。最適な資産配分を算出する際に広く用いられている「平均分散アプローチ」においては、投資期間と資産配分のあいだには、明示的な因果関係はありません(投資期間を考慮しても結果は同じです)。
このような話をすると、時間の経過とともにリスクが減っていく「時間分散効果」があるではないか、と反論する人もいるでしょう。
確かに時間の経過により年率のリスクは減少しますので、これは間違ってはいません。しかし、長期投資をする投資家にとって年率リスクは重要なのでしょうか? 例えば10年間投資する場合、投資家にとってのリスクは10年後に資産額がどのくらい変動しているか、つまり「累積リスク」であって、年率リスクではないと思います。
累積リスクでみれば、リスクは年々上昇していきます。同時に、累積リターンも投資期間とともに上昇していくため、リスクとリターンの相対的関係は変わらず、よって最適な資産配分も投資期間によらず同じになるのです。
ここまでの話で「若者はほかの世代よりもリスクを取った投資はできないのか」と考えてしまう人もいるかもしれませんが、そうではありません。若者はリスクを取って資産運用ができるのです。ただ、ロジックが異なります。
若者の資産の大半は、低リスクな「人的資本」
3月4日に掲載した記事『日本人の平均生涯賃金…「2億円超」をどう捉えるべきか?』では、目には見えないが働く人であれば皆が有する資産である「人的資本」について解説しました。
若者の「人的資本」は、定年退職までの期間が長いことから非常に大きくなります。若者の仕事が株式市場によって給料が変動するようなものでない限り、「人的資本」は債券的な性質を持つため、若者はすでに多くの「債券」を有していることになります。
仮に若者が金融資産を持っていたとしても、人的資本に比べればわずかですから、若者の金融資産と人的資本を合わせた全資産の大半は、低リスクな「人的資本」から構成されます。この状況で、金融資産において株式などで大きなリスクを取って運用しても、全資産のリスクの増分はわずかでしょう。このようなロジックから、若者はリスクを取った運用ができるのです。