資産運用のリスク管理に特に注意を払ってほしいのが、ミドル世代(45~64歳)です。この年代で運用戦略を誤ると、老後の生活にも大きな不安が残ります。しかし、ひたすらリスクを敬遠するだけでは成果は得られません。本記事では、ミドル世代に適した戦略を考察します。資産運用会社のアライアンス・バーンスタイン株式会社で運用戦略を行う後藤順一郎氏が解説します。
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「老後の必要資金」と「現在の保有資産」はいくら?
一般的に、ミドル世代、特に50歳以降になれば子育てはもう終わったという人が多いでしょう。子育てが終われば教育費負担がなくなりますから、毎月の収支は少し楽になり、「さあ、ここからは自分達のためにお金が使えるぞ!」と意気込んでいる人たちもいるかもしれません。
しかし、この局面が老後の生活を大きく左右すると言っても過言ではないくらい重要なのです。ここで油断して派手な消費をしていると、老後にお金がなくなり、まさに「後の祭り」となってしまいます。そんな事態に陥らないためにも、ミドル世代は「老後の必要資金」と「現在の保有資産」の差を把握したうえで、その準備に真剣に取り組まなくてはならない時期なのです。
一方、3月4日の記事『日本人の平均生涯賃金…「2億円超」をどう捉えるべきか?』で説明したように、年を取ると、定年退職までの働く期間が短くなるため、人的資本は次第に減少していきます。
50代にもなれば、この先15年ほどしか働くことができないため、人的資本は若年世代に比べれば相当小さくなってしまいます。リスクの低い人的資本が減少すれば、若年世代のように金融資産で高いリスクを取り続けることもできなくなります。
そのため、ミドル世代では若年世代よりもリスクを抑えた運用をする必要があるのですが、問題はどの程度リスクを落とせばよいのか、ということです。
ミドル世代は「投資元本の大きさ」を活用する
仮に、まだ若年世代で資産形成を始めたばかりのため保有資産が10万円しかなかったとします。そしてこのときに運用で10%のリターンを獲得することができたとします。この結果、10万円×10%=1万円、資産が増えることになります。10%というと高いリターンですが、それでも増えるのはたった1万円なのです。
一方、ミドル世代になれば確定拠出年金の残高などを合わせれば1,000万円くらいの運用資産を保有していてもおかしくありません。この時、同様に10%のリターンを獲得できれば、1,000万円×10%=100万円も資産が増えるのです。当たり前の話かもしれませんが、パーセントで見たリターンは一緒であっても投資元本が大きくなれば金額的なインパクトも大きくなるのです。
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アライアンス・バーンスタイン株式会社
運用戦略部マネジング・ディレクター 兼 AB未来総研所長
慶應義塾大学理工学部 非常勤講師
2006年4月に入社。現在、マルチアセット戦略のプロダクト担当。また、DC・NISAビジネスの推進及びAB未来総研にて顧客向けソリューション/リサーチ業務も兼務。
入社以前はみずほ総合研究所株式会社(みずほフィナンシャルグループから出向)に勤務、主として企業年金向けの資産運用/年金制度設計コンサルティングに従事。
共著書に「年金基金の資産運用-最新の手法と課題のガイドブック-」(2004年、東洋経済新報社)、「企業年金の資産運用ハンドブック」(2000年、日本法令)、「The Recent Trend of Hedge Fund Strategies」(2010年、Nova Science Pub Inc, 2010)。
論文に「ヘッジファンドのスタイル分析-ファンドオブヘッジファンズの超過収益獲得能力の推計-」(2007年、日本ファイナンス学会第15回大会)、「これだけは押さえておきたい資産形成のポイント」(2011年、投資信託事情)、「行動ファイナンスから見た“マーケットとの付き合い方”」(2012年、投資信託事情)、「基礎から分かるターゲット・イヤー・ファンド」(2014-2015年、ファンド情報)など。
1997年に慶應義塾大学理工学部管理工学科にて学士号、2006年に一橋大学大学院国際企業戦略研究科にて経営学修士号(MBA)取得。
日本アクチュアリー会準会員、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、国際公認投資アナリスト(CIIA)、1級DCプランナー、慶應義塾大学理工学部非常勤講師
著者登壇セミナー:https://kamehameha.jp/speakerslist?speakersid=7
著者プロフィール詳細
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