コロナ禍で苦境に立たされている中小企業。朗報とばかりに、新型コロナに関連した融資の利子補給の条件緩和が発表されました。しかし無条件に喜んでいいものなのか、融資条件緩和の裏側を見ていきます。また経済対策として創設される「事業再構築補助金」についても情報が更新されたのでチェックしていきます。※本連載では、企業再生のスペシャリストである坂本利秋氏が、中小企業が経営難を乗り切る方法を解説していきます。

中小企業向けの公庫の融資条件が緩和…しかし実態は?

1月19日更新の経済産業省の『新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ』(支援策をまとめたパンフレット)によると、新型コロナに関連した融資の利子補給の条件緩和が発表されました。以下にポイントをまとめます。
              

♦実質無利子となる融資上限額
・日本政策金融公庫国民生活事業、民間金融機関:4,000万円→6,000万円
・日本政策金融公庫中小企業事業、商工中金:2億円→3億円

♦売上高減少の基準
・売上減少の対象期間:1ヵ月→2週間

 

1つ目の「実質無利子となる金額の上限額」の緩和は、中小企業経営者にとってメリットしかありません。しかし、すでに新型コロナ関連の融資実行額は2020年5月、6月頃をピークに減少し続けています。この事実と筆者の周辺の中小企業経営者のヒアリングによると、新型コロナに関連する追加融資は、1回目の融資よりも審査ハードルが上がっているようです。そのため、実質無利子の上限額の緩和を享受できるのは、これから始めて新型コロナの融資を申請する企業と一部の優良中小企業に限定されるはずです。

 

また、2つ目の新型コロナ関連の融資を受けるための必要条件となる「売上高減少の基準」の緩和も、中小企業経営者にとってメリットしかありません。これまでは判定期間が1ヵ月だったものが、「2週間以上」に変更されます。しかし経営の苦しい中小企業は、ほぼ例外なく新型コロナ関連の借入をすでに行っているはずです。そのため、多くの中小企業にとって、この緩和は享受できないことになります。

 

享受できるのは、新型コロナ感染拡大後も月次売上高が昨年対比で激減していない企業のみ、つまり優良中小企業ということになります。

 

まとめると、これらの緩和策は、中小企業全体にメリットがあると思いきや、実態は一部の優良中小企業しか享受できません。今後の支援対象は、中小企業全体でなく、一部の優良中小企業へますますシフトしていくのでしょう。時間的猶予はありませんので、赤字の中小企業はすぐに再生に取り掛かりましょう。

 

2回目の緊急事態宣言で休業や閉店する飲食店が続出(※写真はイメージです/PIXTA)
緊急事態宣言で休業や閉店する飲食店が続出(※写真はイメージです/PIXTA)

 

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