「あべのハルカス」を超えるビッグプロジェクト、始動
2019年夏、森ビル株式会社を主体とする再開発事業「虎ノ門・麻布台プロジェクト(虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業)」の現場工事がスタートしました。これは、同社の代表的な再開発事業である六本木・表参道・虎ノ門ヒルズシリーズの「未来形」と称されるビッグプロジェクトです。
虎ノ門、麻布台、六本木の3町にわたる広大な敷地内には、大阪「あべのハルカス」の高さを超える高層メインタワーをはじめ全4棟が配置され、それぞれの建物にはホテルやインターナショナルスクール、商業・文化施設が入居する予定です。4棟の建物を結ぶのは、緑豊かな遊歩道と中央広場。都心にいながら自然の潤いを感じられる環境が整備されます。
このエリアの歴史を紐解くと、古くは「麻布我善坊(あざぶがぜんぼう)町」と呼ばれ、江戸時代には芝・増上寺に所縁のある武家一族の法要が行われたと語り継がれています。この由緒ある土地に長く住み続けていた世帯も多かったため、地域住民との協議には時間がかかりました。スタートは1989年、麻布我善坊地区の町内会と「街づくり協議会」を設立したのを皮切りに、同年内に他の2つの町内会とも協議会を設立、4年後の1993年に「虎ノ門・麻布台地区市街地再開発準備組合」として3町の協議会をまとめ、2016年に都市計画提案、2017年に都市計画決定と、2019年の着工までに30年余の歳月を経ています。
コロナ禍による緊急時代宣言発布時、建設現場での感染リスクが高まったために現場作業所が一時閉鎖となったこともありましたが、現在は通常工程に戻っています。竣工は2023年春予定です。
「渋谷の谷」を克服できる?街の動線改良プロジェクト
渋谷駅の周辺でも大規模な再開発事業が進行中です。渋谷駅はJR・私鉄の合計8路線が乗り入れるビッグターミナルですが、各路線への乗り換えは非常に複雑です。半蔵門線、副都心線、東急東横・田園都市線は地下に、JR線と銀座線、井の頭線は地上2・3階に改札があります。
なぜこのような配置になったのかは、渋谷独特の起伏に富んだ地形に由来します。地名からわかるように、渋谷駅がある周辺の土地は「谷」になっており、それぞれの線路を地表に敷設することが難しかったのです。そのため駅のホームを高架にするか、トンネルを掘って地下に設置するか、どちらかの方法を取るしかありませんでした。
加えて地表には国道246号線(青山・玉川通り)、明治通り、六本木通りという都内屈指の交通量を誇る幹線道路が走っています。特徴的な地形と都心の大動脈に阻まれて、渋谷駅を利用する人々は空中に登ったり地下に潜ったりして鉄道乗り換えをするしかありません。この悪しき動線の改良は渋谷区の長年の課題でした。
谷間のアクセスをスムーズにするべく、渋谷区は地権者の一社である東急株式会社とともに「渋谷駅周辺再開発プロジェクト(渋谷駅街区土地区画整理事業)」を立ち上げ、2010年度から2026年度にかけて駅前整備を実施することで合意しました。
鉄道各線間の乗り換えについては、立体的な歩行者動線「アーバン・コア」で地下の路線と高架の路線とをつなぎ、スムーズかつ快適な動線を確保していきます。このアーバン・コアは、すでに開業している「渋谷ヒカリエ」「渋谷ストリーム」、そして2019年秋に開業した「渋谷スクランブルスクエア(東棟)」「渋谷フクラス」に装備され、さらにこれらのビル間もペデストリアンデッキを介して横方向でつながります。
次に一般歩道に関する課題です。渋谷駅の東口と西口間を徒歩で移動する場合、地下道や歩道橋を利用しなければならず、直線で200m程度の距離でも徒歩8分(実質歩行距離640m)かかってしまいます。この問題を解消するため、桜丘口地区の再開発工事が現在進行中です。2026年度のプロジェクト完了までに、東口・西口それぞれの駅前広場が整備され、さらに東西の駅前広場をつなぐ「自由通路」が開通する予定です。
同プロジェクトにかかわる複合ビルのほとんどは2019年度中に開業しており、残るは渋谷スクランブルスクエア(中央棟・西棟)と、桜丘口地区に建つ再開発ビルのみとなりました。最先端の街・渋谷の大規模リニューアルに大いに期待したいところです。