足元の中小企業のM&A状況
M&Aの情報・データサイトであるMARR OnLineによると、新型コロナの影響があったにもかかわらず、2020年のM&A市場は好調を維持したようです。件数では過去最高であった2019年を上回ることはできなかったものの、依然として高水準です。金額では2018年のピークと比較すると半分程度になっています。大型のM&Aが少なかったことが原因でしょう。ここまでは国内市場全体のお話でしたが、中小企業のM&Aも好調を維持しているようです(図表4、図表5)。
以下はデータはありませんが、筆者並びに提携企業からの情報です。中小企業のM&A環境を見てましょう。
団塊世代である経営者が軒並み、中小企業経営者の平均的な退任年齢である70歳を迎えおり、さらに後継者もいないことから、事業継続のために会社を売却する傾向が続いています。
一方、主な買い手である中堅、大企業も買い意欲が旺盛です。一時のとにかく買収したいという企業は姿を消しましたが、長期的な成長のために企業買収を検討していた企業のスタンスは変わっていません。
続いて価格面です。価格については予想に反し、新型コロナ前と比較しても大きく変わっておりません。この時期ならば廉価で買収ができると見込んでいた企業も他の買収候補の存在などもあり、最終的には新型コロナ以前の水準で買収をしています。もちろん株式市場、不動産価格の高止まりも、間接的に価格に影響しているのでしょう。よって、この時期でも適正な価格がつく可能性は十分にありますので、価格面での不安から企業売却を躊躇している中小企業経営者は、再検討ください。
足元の企業の買収意欲、価格については先のとおりですが、スピードについては新型コロナが影響しています。M&Aにおいては書面による調査以外に、現地調査が欠かせません。会社の雰囲気、立地、写真ではわからない不動産の状況などを把握するためです。企業規模によりますが、数名が1週間缶詰になって調査をします。
しかしながら、地方の企業は、都心から公認会計士など数名が来社し、長期間、会社に滞在することに不安を覚えるようです。それは近隣に対する見え方だけでなく、高齢の経営者にとっては新型コロナ感染への不安です。可能な限りZOOM等を駆使し、訪問は最少人数して対応しておりますが、どうしてもスピードへの影響は残ります。
特に第2回の緊急事態宣言下では、進行中のM&A案件も、一時停止のケースが多いと思われます。新型コロナの影響でスピードが遅くなるのは仕方ないことです。企業売却を検討している中小企業経営者がすべきは、少しでも早めに動くことです。
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