株価は単なる偶然でも上下するものだと心得る
基本的に、高い利益を上げ、豊富な純資産を持つ会社の株は高くなります。また、現状ではそうでなくても、将来的にそうした成長が見込める会社の株も、それを織り込んで高くなりがちです。一方、現状で高い利益と豊富な純資産があろうとも、それが減少傾向であったり、将来の成長性が見込めなかったりする会社の株は、それを織り込んで低くなりがちです。
また、業界全体・日本全体・世界全体の経済状況の変動や、その会社の決算発表などを材料にして市場は反応し、それによっても株価は変動します。
このように株価の上下の理由というのはある程度の分析ができますが、しかし、分析不可能な要因、つまり単なる偶然のようなものでもまた、株価は上下します。
ですから株を買う時はまず、「この株はXX円ぐらいが妥当であり、運が悪ければOO円まで下がることもあるだろう」と計算しておくとよいでしょう。そして、いくら株価が下落しても、ここでいうOO円までは、あせって売る必要はありません。
しかし、それ以下に下がったならば、それは購入当初の計算が誤りであったといえます。そしてそれが誤りであったならば、そのあとに株価がどうなるかも予測不可能です。ですからその時が、ロスカットすべき時です。つまりロスカットする株価とは、「予測できる下限の株価」といえるのです。
妥当な株価と予測できる下限株価を計算する
では、ロスカットの妥当な株価と、予測できる下限株価は、具体的にどのように計算すればよいでしょうか。
実はこれは、「その会社の値段はいくらか」を求めることと同じことだといえます。というのも、株というのはその企業の所有権の一部であり、「株価×株式数」で求められる「時価総額」は、まさに市場における「その会社の値段」でもあるからです。
もちろん、その値段(つまり時価総額や株価)は常に変動しているものですから、絶対的な基準があるわけではありません。そこで、例として一般的な指標を参考にした方法を紹介してみますので、参考にしてください。
たとえばある会社Aが現在、以下のような状況だったとします。
● 1株当たり予想純利益=500円
● 1株当たり純資産=5,000円
● 予想1株配当額=200円
● 株価=12,000円
したがってこの場合、
● 予想PER(株価÷1株当たり予想純利益)=24倍
● 実績PBR(株価÷1株当たり純資産)=2.4倍
● 予想配当利回り(予想1株配当÷株価×100)=約1.67%
となります。しかし、A社のこの株価は、過去の実績、近年の業績、現在の財務状況、将来の成長性などを考慮すると、少々高いと考えたとしましょう。そして、予想PERが20倍、実績PBRが2倍を切り、配当利回りも2%を超えるぐらいが妥当だと想定します。
すると、
● 株価P÷1株当たり予想純利益500円=予想PER20倍
● 株価P÷1株当たり純資産5,000円=実績PBR2倍
● 予想1株配当200円÷株価P×100=予想配当利回り2%
が成り立ちます。そして、これを満たす株価Pは10,000円なので、妥当な株価は10,000円ということになります。
続いて、予測できる下限として、たとえ単なる偶然であっても、株価は6,000円まで下がると想定するとします。というのも、株価が6,000円になれば、予想PERは12倍、実績PBRは1.2倍、予想配当利回りは約3.33%となり、この会社の本質的価値を考えるとありえないぐらい割安であり、これ以上は下がらない、と思えるからです。
しかし、もしこのA社の株を、妥当だと判断した10,000円で買い、のちに6,000円を切ってしまったらどうでしょうか?
それは、最初の「妥当な株価が10,000円、下限株価が6,000円」という想定が誤りだったといえるのです。
こうなると、もうこの株価がどこまで下がるかは予測不可能です。こういう時こそロスカットすべき時であり、6,000円という株価がそのまま、その基準となるのです。
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