そもそも「見せ板」とは何なのか?
自分が利益を出せるように相場を誘導するため、取り消すつもりで大量の注文を出すことを、「見せ板」もしくは「見せ玉」といいます。
わかりやすく具体例を挙げますので、【図表】をご覧ください。
これは架空の会社の板ですが、970円から1000円の間で、他の価格帯とは桁違いの注文が入っています。図表ではそれを、赤字にしています。では、この板を見た投資家は、どう考えるでしょうか?
買い手は、「1000円までだと買われてしまうから、それより高い値を指さないと買えない」と思うでしょう。そして売り手の側も、「1000円から970円までなら買い手がつくだろうから、それよりも高値で売りたい」と考えるでしょう。
その結果、価格は1010円以上に推移していくことが想定されます。
ところが、この970円から1000円の注文の多くが一投資家によるものであり、かつ実際にその価格帯で約定しそうになったらその注文が取り消されるとしたら、どうでしょうか?
そう、この注文は、偽りなのです。そしてこれが、価格をつり上げるためにあえて発注された、「見せ板」なのです。
この見せ板を用いた投資家はこの場合、1010円以上で手持ちの株を売るために、見せ板で価格をつり上げたというわけです。
なお、売る場合でも、同じ原理で見せ板が可能です。
見せ板は逮捕例もある禁止行為!
ある意味、「よく考えたな」と思える見せ板ですが、実はこれは、立派な禁止行為です。
見せ板を含めた「相場操縦的行為」は、市場の公正な価格形成を歪める行為として、法令諸規則等によって禁止されています。そしてそれをした人には、金融商品取引法により刑罰や課徴金等の罰則が科せられます。実際に、逮捕された人もいるのです。
なお、このような行為がおこなわれないよう、金融庁が所管する「金融取引等監視委員会」では、ホームページなどを通じて常に情報提供を求めています。
最初に見せ板についてご説明しましたが、したがってこれは、「してはいけないこと」だとしっかり認識しておいてください。
ただし、それをすべて取り締まることは、現実的には難しいかもしれません。
また、約定していない段階では、それが見せ板なのか、そうではなく本当の注文なのかどうか、見極めづらい場合もあります。特に多額の資金を扱う機関投資家による注文は、どうしても出来高に対するシェアが大きくなりがちですので、一見、見せ板のように見える場合もあるでしょう。
さらに、本当に気が変わって注文を取り消しただけなのに、それが見せ板のように見えた、という場合もあるでしょう。
見せ板は禁止行為ではありますが、「そうかもしれないし、そうでないかもしれない注文」もまた、市場には現れることがあるのです。
ちなみに見せ板とは違いますが、出来高の小さい銘柄ですと、個人投資家が特に大量でない売買をしても、証券会社から注意を促すメッセージが届くこともあります。相場操縦などするつもりがなくても、そう見えてしまうこともあるのです。