はじめは何ごともなく進んだ、相続の話し合い
父が遺した資産は、実家とマンションが8室、株式や債券、金、そして貯金と、総額7~8億円はくだらないものでした。父が資産形成に成功していたことは知っていたものの、改めて遺産の莫大さに驚いたといいます。しかし、全員生来欲が深いほうではなく、むしろ話し合いは遠慮がちに進みました。
長女「正直、こんなにたくさんお金があるっていわれても実感が湧かないわね……」
母「特別生活に困ってるわけじゃないし、どうしましょう」
Aさん「そう急いで決めることもないんじゃないかな。時間はまだあるんだし」
数時間世間話を交えながら相談しましたが、なんとなく決め手がないまま初日の顔合わせは終わってしまいました。また改めて集まろうと約束してその日は別れたそうです。
しかし数日後、Aさんの携帯に突然電話がかかってきます。
長女「あ、もしもしA? 遺産の話し合いのことなんだけど」
Aさん「どうかした?」
長女「ちょっと行き詰ってるって夫に話したら、力になれるかもって。当日一緒に行ってもいいかな。母さんは構わないっていってたけど一応確認しておこうと思って」
Aさん「ああ。いいんじゃないか。僕も大丈夫だよ」
長女「ありがとう。それじゃまた今度ね」
軽い気持ちで賛成した長女の夫の関与を後悔するなんて、この時のAさんは夢にも思っていませんでした。
トンデモ自論を披露する長女の夫に一同絶句…
長女の夫「相続の話し合いがうまく進まないと聞きまして。自分の父が亡くなったときの経験でお役に立てないかなぁ、と」
Aさん「わざわざご足労いただいてすみません」
母「詳しい人から意見が聞けて助かるわ」
ひとことふたこと挨拶を交わして、場が落ち着いた頃。本題の相続について話が移っていきます。遺産相続については素人のAさんたちですが、精いっぱい真剣に考え、話し合いも進みました。
長女「いくら不動産があっても、私たちじゃ運用できないし……母さんが住んでる実家以外は、思い切って現金にしちゃったほうがいいんじゃないかな」
Aさん「確かにそのほう分かりやすくていいかもね。それなら、母さん1/2、僕と長女1/2で…」
長女の夫「ダメですよそんなの! 絶対に後悔しますよ!」
話しが纏まりかけたその時、長女の夫が勢いよく立ち上がります。突然の大きな声に面食らいながらAさんは口を開きました。
Aさん「後悔ってどういうことですか? 母が1/2、残りは子どもたちで分けるって、普通だと思うんですが…」
長女の夫「基本はそうかもしれません。でも、将来のことを考えるなら、基本にのっとるだけじゃまずいんですよ。あとで余計に揉めます」
長女「ちょっと…」
長女の目配せに気づく様子もなく、夫は得意げに鼻を鳴らします。
長女の夫「お義母さん、今年でおいくつになるんでしたっけ?」
母「えっ、な、73ですが…」
長女の夫「そう、73。皆さん、ちょっと考えてみてくださいよ。お義母さんはもう遺産、そんなにいりませんよね? 必要な人が使ったほうが良いと思いませんか?」
全員「……(絶句)」
長女の夫「ね? こっちのほうが賢い分配で…」
Aさん「あ、あなた! 自分が何をいってるか分かってるんですか⁉」
長女「そうよ! ふざけないで!」
呆然とする母を庇うようにAさんと長女が声を荒げますが、長女の夫はぽかんとした表情の首を傾げるだけでした。
「あの人、相手に『老い先短いんだから、金を持ってても仕方ない』って母にいったと気づいてないんだ。長女と結婚したのがあんな男だとは思わなかった」
穏やかな笑い声しか聞こえてこなかったAさん宅から怒号が聞こえたのは、その日が最初で最後だったそうです。
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