父の不倫で両親が離婚…苦労の連続だった母子
○登場人物
・父:不倫の末、Aさんの母とは協議離婚。B子さんと再婚した
・母:既に他界。父の前妻であり一人息子のAさんを引き取る
・Aさん:父と母の一人息子
・B子さん:父の後妻。不倫で略奪婚
「父は、養育費は支払ってくれましたが、それだけでした。一度も会いにくることも、手紙を寄越すこともなく」
そう、Aさんは眉をよせて振り返ります。Aさんがまだ幼稚園児のころ、Aさんの父はB子さんと不倫。話し合いの末、協議離婚が成立したそうです。離婚調停はスムーズに進みましたが、そこからは苦労の連続だったといいます。
「母は離婚した後、家を探すだけでも大変だったと聞きます。そこから私の保育園を探し、仕事を探し……結局、パートの仕事を見つけるだけでも精いっぱいだったとか」
いくら養育費が支払われるとはいえ、それだけで生活ができるわけではありません。Aさんは、働き詰めで疲れを滲ませた母の背を見て育ちました。
「幼かった僕や、子育てで疲れていた母を裏切った……父が不倫しなければ、こんな苦労をすることはなかった。そう、考えずにはいられないんです」
親権は母が持っていたから、会いに来にくいのはわかる。それでも時間や場所を話し合って、面会する機会を設けることはできたはず。そう思うと、『ああ、自分は疎まれていたんだな』と嫌でも実感したといいます。
「母が病気で亡くなったときも、通り一遍の挨拶しかありませんでした。だから、父が死んだと連絡がきても大きなショックはなかったです」
むしろ葬儀にひっそりと顔を出しても、妙な虚しさに襲われるだけだったとAさんは話します。
「ただ、僕にも相続権があるので。今まで迷惑をかけられた分、せめて貰えるものはもらっておこうと思いました」