日本で亡くなる人は、年間130万人。亡くなる人の数だけ相続がありますが、お金が絡む話にはトラブルはつきものです。今回は遺産相続の話し合いに相続人ではない人物が参加する、という事例を、山田典正税理士が解説します。

解説:税金面だけで遺産分割を考えてみると…

これは完全に長女の旦那さんの人間性の問題ですね。相続というものは、形式上は法律の問題・お金の問題が良く取り上げられますが、実際には気持ちや関係性、コミュニケーションが問題になっているケースが多いように思います。

 

税金面から考えますと実は長女の旦那さんの言い分は一理あるところでして、財産が多額にある場合には、ほとんどのケースで二次相続を考えると相続財産は子どもが多くもらうほうが税金面で得することになります。パターンをおいてザックリと試算してみましょう。

 

<前提>
父の相続財産 7億円
相続人 配偶者、子ども二人
母の固有の財産 1億円
母の固有の財産+一次相続で相続した財産が二次相続の対象とする

<パターンA 一次相続では法定相続分で相続>
ⅰ一次相続
 ①課税遺産総額 7億円-基礎控除4800万円=6億5200万円
 ②相続税額の総額 (①×1/2×50%-4200万円)+(①×1/4×40%-1700万円)×2=2億1740万円
 ③配偶者の税額軽減 2億1740万円×1/2=1億870万円
 ④納税額 ①-②=1億870万円

ⅱ二次相続
①課税遺産総額 (7億円×1/2+1億円)-基礎控除4200万円=4億800万円
②相続税額の総額(=納税額) (①×1/2×45%-2700万円)×2=1億2960万円

ⅲ相続税負担の総額 
ⅰ+ⅱ=2億3830万円

<パターンB 一次相続でお母さんが1億円、子ども二人が3億円ずつ相続>
ⅰ一次相続
 ①課税遺産総額 7億円-基礎控除4800万円=6億5200万円
 ②相続税額の総額 (①×1/2×50%-4200万円)+(①×1/4×40%-1700万円)×2=2億1740万円
 ③配偶者の税額軽減 2億1740万円×1/7=約3,100万円
 ④納税額 ①-②=1億8640万円

ⅱ二次相続
①課税遺産総額 (1億円+1億円)-基礎控除4200万円=1億5800万円
②相続税額の総額(=納税額) (①×1/2×30%-700万円)×2=3340万円

ⅲ相続税負担の総額
ⅰ+ⅱ=2億1980万円

 

上記の通りパターンAとパターンBの相続で納税額が1850万円も差がでます。ただし、実際には一次相続から二次相続があるまでの間に生活のなかで財産は費消して行きますし、最初に言った通り相続はお金の問題ではなく、気持ちの問題が大きいです。お母様が一人で今後生活していくにあたり、大きな不安もあるでしょう。その不安を埋めるのにお金を多く持っておきたいという気持ちもあるでしょう。

 

それに、仮に上記の通り税負担に大きな差があるからといっても、当たり前ですが相手に「老い先短いんだから、金を持ってても仕方ない」などということは決していってはいけません。

 

また、関係者同士だけでそのような話をしていてもお互いに主張が異なるうえに、コミュニケーションの取り方によっては相手を傷つけてしまい兼ねないです。第三者としてあくまで中立の立ち場である専門家からアドバイスをもらうことで、同じことを伝えるにしても結果はまったく異なるものになるかもしれません。

 

上記はあくまで相続税の負担という一側面だけで説明をしていますが、決して税負担を軽くすることだけが最善の選択肢ということではなく、相続に関わる人それぞれの気持ちの問題、生活の問題、将来の問題が関わります。相続とはそれだけデリケートなものですので、関わる人全員が、自分の気持ちだけをぶつけることのないように気を付けることが、円満な相続を行うための最も重要な秘訣であるように思います。

 

 

2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録