日本で亡くなる人は、年間130万人。亡くなる人の数だけ相続がありますが、お金が絡む話にはトラブルはつきものです。今回は、嫁が介護施設に入居している義母の預金通帳からお金を引き出したことで起きたトラブル事例を、山田典正税理士が解説します。

母が介護施設へ…忙しい長男は「通帳管理」も妻に一任

[登場人物]
・母…介護施設に入所後、逝去
・Aさん(長男)
・Aさんの妻…介護施設に入所した義母の代わりに、Aさんの実家の掃除などを行う
・Aさんの妹(長女)
・Aさんの義弟(長女の夫)

 

「僕にも、どこかに油断があったんだと思います。家の通帳を妻に預けていただけで、まさかこんなことになるなんて……」

 

そう沈痛な面持ちで語るのは、10年前に結婚し、子どもにも恵まれたAさん。悩みの種は、金銭感覚に難のある妻のことでした。

 

「付き合いはじめたころは…わがままでケチなところもあるけど、可愛いなって思ってたんです。結婚してからも、自分が頑張って稼げばいいと思っていましたし…。でも、時々おかしいと感じることが増えたんです」

 

はじめに妙だと思ったのは、妻の実家や兄妹の家に遊びに行ったときのことだといいます。

 

「親族の家とはいえ、無断で冷蔵庫を開けたりして。やめて欲しいとやんわりいわれても気にする様子もなくて…。親戚から『Aから奥さんに注意してくれない?』と何度もいわれました」

 

行動を改めてほしいと妻に丁寧に訴えても、まったく効果がありません。それどころか、「えっ!? わたしがおかしいの?」とどこ吹く風だったそうです。

 

さらにその突飛な行動は日常生活のなかだけではなく、式典でも変わりませんでした。

 

「妹が結婚したとき、妻にご祝儀をまかせたら、帰りの車で、『5,000円しか入れなかった』って何でもないことのようにいうんです。もう、あごが外れるかと思いました」

 

Aさんは、苦々しい表情で当時のことを思い返します。

 

「あとから妹夫婦にお詫びの電話をしたら、『ご祝儀なんて気持ちだから』といってくれましたが……声色が強張っていて、ああ、これは呆れられているなと」

 

そんなことが続き、Aさんが本腰をいれて妻と話さなければと思い始めたころ。Aさんの母が介護施設に入所することになりました。それに加えて、Aさんの部署異動や昇進と重なってしまったのです。

 

仕事が慌ただしくなったせいで、母の介護や金銭の管理などに今まで以上に目を通せなくなってしまったとAさんはいいます。

 

「今思えば、あのとき僕が妻をしっかりと監督しておけばよかったんです」

 

母が介護施設に入所してから、妻がAさんの実家を訪れては、掃除などをしてくれるようになりました。父は7年前に亡くなり、母は1人で実家暮らし。しかし、持病が悪化したこともあり、高齢の単身者が1人暮らしをするのは不安も多い。そのため、周りのすすめと自らの希望で介護施設に入所した、という経緯でした。

 

「最初は嬉しかったんです。妻が実家を掃除したり手入れをしてくれて……それに僕自身、忙しくて余裕がなくて。その流れで、母の通帳の管理も一任してしまいました」

 

Aさんは家計や給料の管理、お金に関することは妻に任せっきりだったといいます。口を出そうとしても、強く出ることができずに、いつも引き下がってしまいました。

 

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※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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