日本で亡くなる人は、年間130万人。亡くなる人の数だけ相続がありますが、お金が絡む話にはトラブルはつきものです。今回は編集部に届いたある家族の争いについて、山田典正税理士が解説します。

突然の父の死…子は相続放棄し、全財産を母が相続

[登場人物]
父…70代になってリタイヤ。健康そのものだったが突然死
母…Aさん、Bさん、C子さん、3きょうだいの母
Aさん(長男)…優しい性格で、周りに気を使いすぎる性格
Bさん(次男)…
C子さん(長女)…3人きょうだいの末っ子

 

「父さんの相続の件だけど……」

 

次男のBさん、長女のC子さんが、長男のAさんから話を持ちかけられたのは、父の初七日法要のときでした。

 

3人の父が亡くなったのは、突然のことでした。特に持病もなく、健康そのものだった父は、定年後も再雇用で働き続け、70代になったその年に退職。「やっと落ち着いて、ふたりで老後を楽しめるわね」と言った母が印象的でした。亡くなる3日後には、夫婦水入らず、旅行に行く予定だったのに……。父の死は突然のことであり、まだまだ若いということもあり、家族のショックは大きいものだったといいます。

 

動揺する家族のなか、「自分がしっかりしないと」と葬儀を取り仕切ったのは、長男のAさんでした。普段は周囲を気にするあまり優柔不断になってしまう兄に、BさんもC子さんも頼りないと感じていましたが、テキパキと動く兄を少し見直したそうです。

 

Aさんの話では、父が遺した財産は、自宅と貯蓄が3,000万円、そして株式が1,000万円ほどでした。それらをどのように分割するかに対して、すべて母に相続させてみては、というのがAさんの話です。

 

「結構な遺産だろ。老後、母さんと色々楽しむために頑張ってきたんだろうな。それに母さんはまだ65歳だろ。10年後、20年後と先のことも考えないといけない。お金はいくらあってもいいと思うんだ。だから俺たちは相続放棄して、お母さんに全財産、相続してもらうのがいいと思うんだ」

 

Bさんも、C子さんも「その通り」と、すぐに同意。こうして、父の遺産はすべて母が相続することになったのです。

 

父が亡くなった1ヵ月あまり経ったころ。四十九日法要が行われることになりました。Bさんは帰省を前に母に電話したところ、元気な声で出てくれました。当初、動揺し、落胆していた母でしたが、段々と父の死が現実として受け止められるようになったと話をしていました。

 

「帰ってきたら、ちょっと話があるから」

 

「話!?」

 

「詳しい話は、帰ってきたときに」

 

なんだろう……ちょっとモヤモヤした気持ちになったBさんでした。

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※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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