「住みやすさ」と「維持管理のしやすさ」のジレンマ
条件3:遮音対策のためコンクリートの厚さに工夫がある
快適な暮らしの実現のためには、外部からの音を遮り、住戸内の音を漏らさないことがポイントです。
それを解決するのは、木造や鉄骨などのほかの構造材と比べて遮音性に優れた鉄筋コンクリートです。鉄筋コンクリートは、適切な厚さを確保することで80 デシベル(地下鉄の車内の音レベル)を30デシベル(郊外の深夜の音レベル)まで抑えることができます。
鍵を握るのは「適切な厚さ」です。例えば、妻側(建物の端)の外壁に約150〜200mmのコンクリート厚を持たせることで、マイナス50デシベルの遮音が実現できます(図表1参照)。
住戸間の戸境壁と戸境床には、150mm以上という、日本建築学会が推奨する「好ましい性能水準」のコンクリート厚を確保することで、それぞれにおいてマイナス50デシベルを実現できるのです。
条件4:遮音対策、メンテナンス対応のため二重床になっている
遮音対策でもう一つ大切なのは、床への対策です。
戸境床(階下の部屋との境になる床)は、コンクリート床の上に、防振ゴム付きの束と呼ばれる支持脚を立てて、床の基盤材となるパネルを支える構造にする。つまり、二重床にすると生活音が低減できます。
ものを落としたり、人が動いたりすると、階下へ衝撃音が伝わります。衝撃音に対する遮音性能はL値という値で示され、数値が低いほど遮音性に優れています。
衝撃音はマンションで椅子を引きずる音や、スプーンなど硬くて軽いものを落としたときに発生する「軽量床衝撃音(LL-レベルライト)」と、子どもが椅子から飛び降りるなどしたときに発生する「重量床衝撃音(LH-レベルヘビー)」の2種類に分けられます(図表2参照)。
※2008年に改正があり、「ΔLH等級」が採用されていますが、旧表示の(LL等級)がまだ一般的ですので、本書では旧表示を用い説明します。
日本建築学会では、LL-45等級(ΔLL〈Ⅱ〉-3相当)を学会推奨レベルに位置づけ、「スプーンを落とすと、かすかに聞こえ、上階の生活が多少意識される状態」としています。LL-40等級(ΔLL〈Ⅱ〉-4相当)は特別仕様レベルとされていて、「気配は感じるが気にはならず、上階で物音がするがこする程度」と表現しています。
住みやすさを極めるなら、レベルの高い遮音性能が求められます。二重の床は手間も工期もかかりますが、それによって遮音性能が上がることが分かっています。
また、二重床にすることで、コンクリート床とパネルの間に隙間ができるので、配管を収めることも可能になります。メンテナンスの際にはパネルを剝すだけで作業ができますので、対応がすばやく楽にできるというメリットもあります。
「耐震性」とカッコよさは両立できない?
条件5:バランスの良いスパン計画を採用している
柱と柱の間のことは「スパン」と呼ばれ、構造物としてのバランスを左右する重要な役割を果たします。経済的でバランスの良いスパンは、コンクリートの場合、窓側は6〜7m、壁側は10〜11mとなっています。
また、いくら計算上は問題ないとしても、極端に横に細長い建物やいびつな形の建物は、強風や地震対策の観点から避けたほうが安心です。バランスが良いのは、どこから力が加わっても耐えられるような均等な建物、すなわち、上から見たときにできるだけ正方形に近い形です。
建てる土地の形にもよりますが、バランスを考えたスパン、形にこだわるといいでしょう。