売り手は「目をつむらざるを得ない」悲しい事情が…
例えば、不動産のような大きな売買でなくても、ブランド品などの買取額をめぐっての客と店主との攻防は、だいたい次のようなものです。
店主が物品を査定して出した金額を伝えると、客は納得のいかない様子で「もう少し高くならない?」「買ったときはもっと高かったのよ。いい商品なのは間違いないんだから」「あと1万円くらいオマケしてよ」などと要望します。すると、店主は「これが精一杯なんですよ」「先月までは買取セールをやっていて、もう少し色を付けられたのですが」などと答えます。
高く買ってほしい客と、安く買いたい店主との一騎打ちです。こういうリアルなやり取りは単に傍観者として見ている分には面白いのですが、当事者同士は必死です。しかし、最終的には、店主が提示した〝これ以上は高くできない〟という価格で決着します。決着の仕方は、客が納得して売るか、納得いかずに交渉が流れるかの二つに一つです。
店主が「これ以上は出せない」と言い「嫌なら売ってくれなくてもかまわない」という態度で来られると、たいていの客は「仕方がない」と折れます。業者側はこれを商売にしている百戦錬磨のプロですから、初めての客が太刀打ちできるわけがありません。結局は、提示された金額を飲むか飲まないかしかないわけです。これが業者の論理です。
店主にとって客が持ってきた物品が魅力的で、ビジネス上どうしても手に入れたいものなら、高めの価格を提示してくれますが、そうでない場合はシビアな金額を提示してきます。たいていの場合、後者の部類に入ってしまうことが多いので、客は安くても売る羽目になってしまいがちです。
このように、買取というのは基本的に〝業者優位〟の交渉で事が進んでしまうのです。これは、不動産の買取でも同じです。不動産業者の先導で交渉が運んでしまうことが多いため、売り手は安い価格でも目をつむって売ることになります。「買い叩かれた」などの残念なケースは、この業者の論理にまんまとはまってしまった結果と言えるかもしれません。