姑がえらく深刻な顔をして考え込んでいる。
物忘れのひどいのには呆れる。無呼吸のせいではと思い、精神科の診察の際、先生にお尋ねするとそうとも言えないと言われる。睡眠障害もひどいので、先生もどうしたら改善されるか模索されているようだ。
入院中は無理なように私には思えるが。先生もそう思っておられるのかもしれない。退院するまでに一度外泊して様子を見ようということになる。
その話を聞いてから妄想がひどくなる。私がトイレから帰って来ると姑がえらく深刻な顔をして考え込んでいる。
これはまたとんでもないことを言い出すぞと思っていたら案の定、「公ちゃん、うち、この工場辞めさしてもらうわ。気い使うてお給料もらうのしんどなってきたわ」と突拍子もないことを言い出した。
「え? 何のこと? おばあちゃん、おばあちゃんは今病院に入院しているの。ここ工場やないの。きっと、若い頃のこと思い出してるんやね」と言うと、「え? ここ工場と違うの? うちまたおかしなったんかいな」と首をかしげる。きっと看護婦さんの白い帽子や白衣が工場の作業着を連想させたのではないか。
テレビのドラマがそのまま妄想になったりすることが以前も何度かあった。