(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の親と離れて暮らしていると、日常の変化に気づく機会は限られます。電話やメッセージでは「大丈夫」と返ってきても、実際の生活状況までは分かりにくいものです。体調や住環境の変化は、本人の中で徐々に進行するため、周囲が異変を把握したときには状況が大きく悪化しているケースもあります。

「元気だとばかり…」息子が見落としていた変化

正弘さん(仮名・56歳)は、母・敏子さん(仮名・84歳)と離れて暮らしていました。父はすでに他界し、敏子さんは長年一人暮らしを続けていました。

 

「たまに電話はしていましたが、“大丈夫よ”としか言わない人だったので、深くは気にしていませんでした」

 

帰省の機会は減り、気づけば3年近く実家に足を運んでいなかったといいます。それでも、季節の変わり目になると、母から短いメッセージが届くことがありました。

 

「冷えるから無理しないで」

 

その言葉は、いつも息子を気遣うものでした。

 

「こちらのことばかりで、自分のことは何も言わないんです」

 

しかし、ある冬の日。

 

メッセージを受け取った数日後、近所の人からの連絡で、敏子さんが自宅で倒れているのが見つかったと知らされます。すでに亡くなっていたといいます。

 

「頭が真っ白になりました。母の死を、すぐには理解できませんでした」

 

正弘さんは急いで実家へ向かいました。久しぶりに開けた玄関の扉の向こうに広がっていたのは、記憶とは少し違う光景でした。

 

部屋は整理されているものの、暖房器具は古く、使われていた形跡がほとんどありません。台所には最低限の食材しかなく、冷蔵庫の中も空に近い状態でした。

 

「生活はしていたんだと思います。でも、かなり切り詰めていたんだと分かりました」

 

電気代の請求書やレシートを確認すると、冬場でも光熱費は極端に低く抑えられていました。

 

「寒かったはずなのに、暖房を使っていなかったんじゃないかと」

 

近所の人の話では、敏子さんは「電気代がもったいない」と話していたそうです。正弘さんは、その言葉を聞いたとき、母からの最後のメッセージを思い出しました。

 

「冷えるから無理しないで」

 

「自分のことだったんじゃないかと、後から気づきました」

 

総務省『家計調査(2025年)』によると、高齢単身無職世帯の平均消費支出は月14.8万円です。限られた収入の中で生活を維持する高齢者にとって、暖房費や食費を抑える行動が健康リスクにつながる場合もあります。

 

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