こんな人材が日本にも欲しかった。オードリー・タン。2020年に全世界を襲った新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾。その中心的な役割を担い、世界のメディアがいま、最も注目するデジタルテクノロジー界の異才が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIとイノベーション、そして日本へのメッセージを語る。本連載はオードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

5Gの導入を「都市からではなく、地方から進める」

台湾が5Gの導入を地方から行っている理由

 

台湾のデジタル化の現状を少しお伝えしましょう。

 

台湾では、すでに5G(第五世代移動通信システム)が普及しつつあります。4Gと5Gの最大の違いは、5Gのほうが遅延時間(ラグ)が非常に短いということです。

 

たとえば、ウェブ会議システムを使って海外メディアの取材を受けるときも、私は外国にいるインタビュアーのリアクションをほぼリアルタイムで見ることができます。これは通信スピードがアップしたからではなく、遅延がなくなったということです。

 

現在、台湾では5Gは地方で整備が進んでいるという。(※写真はイメージです/PIXTA)
現在、台湾では5Gは地方で整備が進んでいるという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

スピードが速い遅いというのは、私が相手をディスプレイ越しにどれだけはっきりと見ることができるかという問題ですが、ここで言う遅延とは、相手がうなずいてから私がそれを認識するまでにどれだけの時間がかかるかということです。

 

たとえば、ブレーキを踏んでから車が止まるまでの時間は遅延と言えるでしょう。また、車を運転中に対向車とぶつかりそうになってクラクションを鳴らした場合においても、相手に音が聞こえるまでには遅延が生じます。音の伝播速度に限界があるため、そこに遅延が生じるわけです。

 

4G技術の特徴として、光ファイバーよりかなりスピードが落ちるということが挙げられます。つまり、自動運転で対向車と衝突した場合、衝突した車同士が4Gで通信していたら、ぶつかってからやっと「対向車とぶつかるぞ」という信号が届くという感じです。それが5Gであれば、信号が最初に送信されるため、対向車は衝突を避けるためにハンドルを切るか、すぐにブレーキをかけることができます。これは4Gと5Gの大きな違いです。

 

このような5Gを公共利用するためには、多額の設備投資を行わなくてはなりません。これを政策として進める場合、まず4Gの利用率が比較的低い場所に5Gの設備を確保することが重要です。要するに、ネット環境が良くない地方にまず5Gを導入するのです。それによって、地方の人たちの学習環境や健康管理の権利を確保したり、改善したりすることが可能になるでしょう。

 

これまで台湾では、地方に対しては大規模な資金を投入した設備投資が必ずしも行われてきませんでした。しかし、5Gについては、「都市からではなく、地方から先に進める」という方式をとっていて、現在、地方での5Gのチャンネルを確保するために多額の資金投入が行われています。

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オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

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オードリー・タン

プレジデント社

2020年に全世界を襲った新型コロナウイルス(COVID‐19)の封じ込めに、成功した台湾。その中心的な役割を担い、2020年新型コロナウイルス禍においてマスク在庫管理システムを構築、台湾での感染拡大防止に大きな貢献を果たす。…

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