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病院を存続させるには、時として「取捨選択」も必要
経営状態の低迷を打破するために、大胆な改革をしようとするなら、どこかに「痛み」が生じる可能性があります。それはたとえば、理事長の経済的負担だったり、病院スタッフの労力的負担だったりとさまざまです。
できるだけ時間をかけながらソフトランディングできればいいのですが、そのためには、なにを重視して、なにを諦めるのか、理事長に経営上の選択が求められます。
理事長を悩ませる「避けられない問題」
40床のベッドをもつ整形外科X病院の森理事長(仮名)は、まだ52歳の若さでした。約10年前に、M&AでX医療法人の出資持分を譲り受けて理事長に就任しています。かつてのM&A当時のX病院は業績がやや悪く、利益ゼロ程度の水準でした。
森理事長の就任後、慢性期病院としての機能は残したまま非効率部分を改めていく地道な経営改革が進められ、少しずつ収益も改善されてきました。森理事長は、スタッフが充実して働けるからこそ、患者にも質のいい医療サービスが提供できるという理念のもと、地域への医療貢献とともに、勤務医や看護師など人材への厚遇をポリシーとしていました。
収益面では、診療報酬改定により、慢性期病床に関わる診療報酬の引き下げが続いたことから、ここ数年は、稼働率はほぼ横ばいで維持しているものの、利益幅は減少が続いています。
利益の減少に加えて、森理事長を悩ませていたのが病院建物の老朽化です。森理事長が譲り受けた段階からかなり古く、旧耐震基準で、耐震補強もなされていませんでした。そこで耐震補強をするか、それともいっそ建て替えて最新建築にするか、経営判断が迫られていました。
建物の構造体の耐震補強は可能であるものの、さまざまな面での老朽化は避けられず、集患の点からも、できれば建て替えたほうがよいと思われました。しかし、利益が減少しているなかで、多額の債務を背負ってまで建て替えるのはリスクが大きいのではないかとも感じられます。
その点も含め、病院の将来をどうしていくのがよいのか、私たちにご相談があったのです。