坂や崖が多い神奈川県…家を建てるときの裏事情
内部の見えない部分は、購入者が自分で調べようとしても限界があります。かといって専門家が調べる際にも、購入前の物件を破壊して内部を調べるわけにはいきません。そこで、〝建物を破壊しない=非破壊検査〟によって精度の高い住宅診断を行います。そのひとつが、コンクリートの強度を検査する「シュミットハンマー」を使った診断です。
これは、器具の先端を少し出した状態でコンクリートの基礎にグッと押し付けて、戻ってくるときの衝撃の反発力で、コンクリートの強度を調べるというものです。この機器を使ってコンクリートの基礎部分を複数箇所で測定し、平均値を出します。これによって、コンクリートの圧縮強度の測定ができます。コンクリートは施工後27日で固まるので、施工から約1カ月後には調べることが可能です。
住宅の基礎以外の部分でコンクリートを使用している箇所が、もうひとつあります。土砂崩れを防ぐための擁壁(ようへき)です。
関東地方でいえば、坂や崖が多い神奈川県では、宅地造成地を造る際に擁壁をコンクリートで造ることがあります。地盤の安定化のために行われるわけですから、その強度は極めて重要です。前述した「しゃぶコン」のような水分の多いコンクリートで造った壁にひびがあると、土のほうから水が浸み込んでしまい、強度が損なわれてしまいます。
この場合も見た目で判別することは不可能なので、「赤外線サーモグラフィー」を使ってコンクリート表面の温度変化を0.1度単位で測定します。他の箇所に比べて温度が低くなっている箇所は、水分が含まれている可能性があります。
水分が存在する可能性のある箇所を把握したうえでシュミットハンマーを使った診断を行えば、より精度の高い強度の測定が可能です。