現代日本において多くの人が悩む「お墓」の問題。あてにしていた子どもがお墓を継がないと言い出した。継ぐ意思はあっても遠方に住んでいて負担が大きい。思いのほか費用がかさむ…。終活ブームが高まるなかでも後回しになりがちなお墓問題について、いまいちど整理してみましょう。※本連載は、樺山玄基氏の著書『令和時代のお墓入門』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

お墓の相場は「200~300万円程度」が一般的

そもそもお墓を建てるのにどんな費用が発生し、いくらかかるのか知っている人は多くはないのではないでしょうか。

 

家を新築する際にも同じことがいえますが、基本的な考え方は「土地代+お墓代」=お墓を建てる際の総額、になります。土地は区画を買い取るわけではなく、その区画を使う権利を買うことになります。墓地を永代に渡り使用する権利で、墓地の規定に基づき、年間管理費を納めるなどの条件を満たせば、お墓の継承が続く限り行使できます。

 

そしてこの権利に対して払う費用を永代使用料といいます。一般的にはお墓を建てる際に一括で支払います。永代使用料を支払い、手続きを経ることで得られます。この権利は祭祀主宰と同様に継承することは認められていますが、第三者に譲渡、転貸することはできません。

 

お墓をもっている人のなかには、墓地が自分の土地だと思い込んでいる人も少なくないようですが、永代使用料を払っても得るのは「使用する権利」だけであり、土地が自分の資産になるわけではありません。あくまで所有者は墓地や霊園の管理者、例えばお寺の墓地であればそのお寺が所有者ということになります。

 

永代使用料は区画が広いほど高くなりますが、都心は地価がもともと高いため、同じ予算でも地方より狭くなるのが普通です。逆に、地価の安い地域ではあらかじめ一区画が広く設定されており、都内より使用料が高くなる場合もあります。

 

いずれにしてもいちから墓を建てようとする場合、土地を確保し、墓石を建立するには相当な費用がかかることを念頭に置かなくてはなりません。

 

お墓部分はさらに墓石代や名前を彫るなどの加工費、工事費等があり、オリジナルのデザインにするとなると設計費などもかかります。また、墓石というと地上に出ている部分だけがイメージされやすいのですが、地下にもお骨を納めるスペースをつくる必要があり、費用がかかります。この場所を納骨室(カロート)といいます。

 

墓石にはさまざまな種類があり、値段にも幅があります。なかなか手に入らないレアな石を好む人もいるようですが、値段が高くなるのに加え、将来的に傷んだ時の修繕が難しいという点は留意しておかなくてはなりません。国産よりも安定供給できるという点で、昨今はアジア諸国からの輸入ものが大半を占めています。

 

なお、墓地に建てる際に基礎工事が必要なところは、その費用が利用者負担になる場合もあります。そのほか、墓地によって、運搬費や設置にかかる費用が加算されることもあります。

 

家と同じようにお墓も「手をかけるほど費用がかかる」ものといえます。例えばいちから自分でデザインを起こすようなオーダーメイドのお墓では、デザイン料などでさらに費用が上乗せされる一方、お墓には建売のタイプもあり、工事費等設置にかかる費用が抑えられるものもあります。

 

そのため価格帯にはあくまで幅がありますが、従来型のお墓を建てるのに必要な予算は200~300万円程度というのが一般的な相場といったところでしょうか。

現代において「お墓」は高額

かつては先祖代々、一族で入るもの、という認識から、一度建てればずっと子や孫の世代までそのお墓に入ることを考えれば、このくらいの金額も許容の範囲だったかもしれません。

 

しかし現代社会は核家族化が進み、自分のあとの世代も入ることを見越して墓をつくるという考え方が成立しにくくなっています。さらにバブル以降の景気の停滞、高齢化による医療費や介護費の負担が重い、などの現状から、かつてのようにお墓を建てることに費用をかける余裕がなくなってきているのもまた実情と思われます。

 

さらに、従来の墓の場合、建てて終わりというわけにはいきません。従来型のお墓の場合、ランニングコストとして忘れてならないのが年間管理料です。これはお寺や霊園等が、その墓地を管理運営するためにかかる費用で、こちらはお墓がある限り、毎年支払いが発生します。

 

この金額に規定はなく、墓地により年間数千円~数万円までさまざまです。同じ墓地でも区画や墓石の大きさによって金額設定が異なるところもあります。なお、年間管理料はお参りに来る人が使う水場やゴミ箱、お墓の通路等公共の場所やものの整備に使われるもので、各家々のお墓や区画の清掃は含まれていません。年間管理料を支払っているのだから掃除にいかなくてもいい、ということにはならないのです。

 

従来のお墓の場合、個々のお墓は自分たちできれいにするのが基本です。墓石が傷んだ場合、柵が壊れた場合などのメンテナンスにかかる費用も遺族が負担することになります。今ある一般的な墓地は、1965年頃から増えてきました。その頃に立てたお墓は50年を超えてきています。そろそろ墓石のひび割れなどの傷みが目立ってくる頃です。たとえ石に問題はなくても、周囲を囲う柵が倒れるなどで、隣り合う墓の所有者に迷惑をかけることもあります。しかし現実にはその修繕まで手が回らないのか、放っておかれる区画も少なくなく、トラブルに発展してしまうケースも増えていると聞きます。

 

このように、建てたあとにもずっとなにがしかの支払いが続くことも考えあわせると、二の足をふんでしまう人も増えているのが現状といえます。人生100年時代ともいわれる時代、ほかのさまざまなことにお金がかかり、お墓には昔ほど予算を当てられないという人が増えているというわけです。

 

 

樺山 玄基

 

 

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令和時代のお墓入門

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樺山 玄基

幻冬舎メディアコンサルティング

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