自分のお墓を建てようにも、引き継ぐ人がいない。子供に迷惑を掛けたくない…。そんな思いから「永代供養墓」が普及しています。かつては合祀タイプが多かったものの、「個を尊重すべき」という現代の感覚に対応し、合祀ではない「個別墓」タイプまで登場しているという発展ぶり。従来の「先祖代々のお墓」とは何が違うのか。普段は知る機会のないお墓の事情について紹介します。

「永代供養墓=無縁墓」という大きな誤解

以前は永代供養という言葉が、無縁墓をオブラートに包んだ言い方として使われていたこともありました。お墓の場所も、お寺の敷地内ではあったものの、目立たない隅の方で、陽当たりもあまり良くないようなエリアに、ひっそりと、というところが多かったようです。

 

そのために一昔前までは、永代供養墓というと、「そんなところに親を入れたくありません!」とあからさまな拒否反応を示す方が少なくありませんでした。でも今は違います。テレビや雑誌等で永代供養墓がよく取り上げられるようになってきて、少なくとも無縁墓でないことは徐々に伝わってきていると感じています。そしてより明るいイメージを持たれつつあることも、うれしく思っています。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

承継者がいなくても「無縁墓になりようがない」事実

もしかしたら永代供養墓は承継者が不要であることから、「継ぐ人がいなければ、無縁になるんでしょ?」と誤解されやすいのかもしれません。

 

しかしたとえ承継者はいなくても、お寺がしっかりと縁を取りもち、供養をしていくのですから、むしろ仏さまに近い、強いご縁で守られたお墓と解釈することもできるでしょう。

 

大切なのは、亡くなった方への思いが途切れることなく、お墓に向けられるかどうか、だと私は思います。それができている限り、無縁墓になるようなことはなく、したがって永遠の供養がお約束されている永代供養墓は、無縁墓になりようがないのです。

 

お寺の墓地にもいろいろあり、お寺が所有しているとはいえ本堂とは別の、いってみれば“離れ”に墓地があるケースもあります。従来のお墓はご遺族が管理しますが、永代供養墓の管理はお寺のお役目ですから、現実的な話、本堂に近いほうが、目が行き届きやすいという事情があります。ほとんどのお寺が、しっかりお墓の面倒をみていきたいとの気持ちから、好意的に本堂の近くを提供してくださいます。

屋内の納骨堂とは別…永代供養墓は「屋外」が原則

永代供養付きの個別墓のお話をすると、「納骨堂のようなものですか?」と聞かれることがままあります。納骨堂は都市部を中心に、やはりここ10年ほどの間に増えてきた印象があります。やはり個別の小さな部屋にお骨をおさめ、お参りもそこにいく、というもので、普段の管理もお寺が行います。

 

背景にはやはり都市部の用地不足があります。遠方に墓を建てるよりは、とアクセスの良さを重視し、納骨堂を選ぶ方も多いようです。個別にお骨をおさめる方式としては納骨堂のほうがよく知られているため、永代供養墓も「屋内にあるもの」との先入観をお持ちの方が少なからずいらっしゃいます。

 

しかしこれも誤解です。永代供養墓は実は「屋外が原則」なのです。納骨堂にお骨をおさめることは、法律上、埋葬とはいいません。ドライな表現になってしまいますが、“一時預かり”の位置付けなのです。つまりいずれは、その場所を移動し、どこかに埋葬することを前提とし、期限付きで保管されている場所なのです。

 

そのため納骨堂そのものも業種区分は倉庫業であり、開業時、行政等各方面に許可をとるときにも倉庫として申請します。

 

一方、永代供養墓は従来のお墓と同じく、位置づけは「墳墓」です。したがって永代供養墓にお骨を安置することは埋葬とみなされます。そして、おさめた場所を移動させる必要もなく、ずっとその場所で供養ができます。

 

納骨堂は、そこへ遺族が行ってお参りもできるので、あたかもお墓と同じように思われますが、法律上はお墓ではありません。

「年間管理料」もなし…経済的負担が少ないという魅力

また、納骨堂は年間管理料を毎年払う必要のあるところがほとんどです。その大半は、お参り用に骨壺を移動させる機械のメンテナンス費用といわれています。納骨堂で今主流になっているのは、お骨を機械で移動させる自動搬送式納骨堂です。多くの場合、参拝スペースが1ないし数ヵ所設けられており、骨壺は普段、そこから離れた場所におさめられています。そしてお参りの際、ICカードをかざすなど操作すると、機械が骨壺を参拝スペースまで運んでくるのです。街なかの立体駐車場に似た仕組みといえるでしょう。

 

機械である以上、定期的なメンテナンスは必須です。ましてお骨を扱うとなると、万一の事故があっては縁起が悪いといわれかねませんので、不具合がないようこまめに点検しなければなりません。費用もそれなりにかかる、というわけです。

 

永代供養墓ももちろん、お参りできます。従来の墓と同じで、参拝スペースなどはなく、お参りする人がお墓の前に出向きます。納骨堂のように骨壺を動かすということももちろんありませんから、機械のメンテナンス代もかかりません。

 

前項の納骨堂だけでなく、従来のお墓に関しても、毎年お寺に管理料をおさめるのが普通です。これはおもに墓地の備品購入や設備の修繕、墓地全体の清掃費用などにあてられるもので、個々のお墓の掃除や管理までまかなわれるものではありません。

 

年間管理料は承継者がいる前提で設定されているといえます。平たくいえば自治会費のようなもので、自分たちの祖先が眠っている墓地は自分たちでメンテナンスしていきましょう、という考えです。

 

とはいえ、新たにお墓を建てて数百万かかったうえ、そのあとも毎年支払いが生じるとなると、経済的に負担が少なくないと感じる人も多いでしょう。

 

その点、永代供養墓は承継者がいないので、後々まで管理料を支払う人もいない、ということになります。そこで年間管理料は不要とし、お墓のある区画の整備等は、登録時に支払う志納料(利用料)からお寺が費用を充てるという考え方にしています。遠方にいるなどで承継者にはなれないが、身内が永代供養墓に入っているというケースでも、年間管理料をいただくということはありません。

「すぐに入れて、生前申し込みも可能」という円滑さ

従来のお墓で意外と見落とされやすい点が、「お墓が建つまでの期間」です。新たにお墓を建てる場合、墓地を購入しお墓が建つまでにおおむね2~3ヵ月の期間をみておきたいものです。四十九日には納骨したいと考える人が多いようですが、現実には間に合わないことのほうが多いと考えるほうが良いでしょう。

 

その点、永代供養墓は生前に申し込みができ、誰が入るかあらかじめ決めておくことができますので、その時がきたら亡くなったあとすぐ、埋葬することが可能です。葬儀から埋葬まで迅速、スムーズであるという点も、なにかとあわただしく精神的なストレスを受けやすい遺族にとっては安心材料になるようです。

 

 

樺山 玄基

 

 

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※本連載は、樺山玄基氏の著書『令和時代のお墓入門』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

令和時代のお墓入門

令和時代のお墓入門

樺山 玄基

幻冬舎メディアコンサルティング

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