お墓の引き継ぎ問題を解消する「永代供養墓」
いつの時代も、親が子を思い、子が親を思う気持ちは変わりません。しかし今のお墓のあり方では、必ずしもそれが行動に移せない人がいて、年々増えているのが日本の実情です。子どもから見れば供養したくても自分が遠方にいるなどでできない、親から見れば、子どもに墓のことで面倒をかけたくない、という気持ちです。
それなら、それを確実にできるお墓の形態があれば、そういった悩みを持つ人々のニーズに応えられるのではないか。言い換えれば、お墓も自分の家族構成に合うものを選べるほうがいいのではないか、という発想で生まれ、広まってきたのが「永代供養墓」という新しいスタイルのお墓です。
つまり承継者がいない、離れたところにいて承継ができそうにない、あるいは将来が流動的で確約できない、そうした事情で将来にわたる供養の継続が難しい可能性があるすべての人の、新たな選択肢となっているのが永代供養墓なのです。
永代は「永遠」、そして供養は文字どおり、亡くなった方をご供養することです。つまり永代供養墓は「永遠に供養をする」ためにできたお墓です。
供養をするのはもちろんお寺です。永代供養墓は申し込んだ時点で、子孫の状況がどのようになろうと関係なく、永遠の供養が約束されているお墓なのです。つまり、「承継を前提としない」というのが最も大きな特徴です。
しかし、こうした本来の意味とは裏腹に、どうも永代供養墓にはいくつか誤解されていることがあるように思います。ここ10年ほどの間で少しずつ名前が知られるようになったものの、十分かつ適切な情報が伝わっていないと感じます。
そこで、永代供養墓の理解を深めるため、よくある誤解や質問なども交えながら、特徴を述べていこうと思います。
よくある「永代供養墓=合祀」という誤解
「永代供養って合祀なんですよね? 他人と一緒にされるのはいやです」今でも、頭ごなしにこう言われることが多々あります。
一般的にはまだまだ、永代供養といえば合祀、つまりほかの人の遺骨とともに1ヵ所に埋葬されるもの、との認識が強いように思います。
確かに永代供養墓の中には、合祀のタイプのものもあるのは確かです。もともと10年ほど前、永代供養墓ができはじめたころは合祀タイプがほとんどだったことも事実です。その時に情報を得た人は、永代供養墓=合祀と思い込んでしまうのも無理はないでしょう。
しかし今は違います。より利用者の多様なニーズに応えるべく、永代供養墓のバリエーションがここ数年の間に増えてきています。合祀ではない、個別墓のタイプも登場しており注目されています。
イメージは「マンション」。契約した部屋に骨壺を安置
個別墓は「マンションタイプ」と呼べばイメージしやすいでしょうか。お寺の敷地内に約30cm四方のお部屋を集めた一角を設けており、そこに契約者のお骨を骨壺に入れて安置するようになっています。
合祀の場合、骨壺がないということが、死者をねんごろに弔っていない印象を与えがちなようです。実際、個別墓で骨壺ごと安置しますと教えるとほっとした表情になる人が大勢います。
骨壺にはいくつかのサイズがあり、例えば関東で一般的なのは底面が21cmほどの七寸壺です。個別墓ですからほかの人のお骨と混ざるようなことはなく、その一室を利用できるのは夫婦や家族のみ。コンセプトは従来のお墓と同じである、と考えて構いません。
あとから人数が増えた場合に対応できるのも、従来のお墓と同じです。ただしスペースは従来のお墓より小さいので、増えた場合は骨壺を小さいタイプにして、同じお部屋に安置します。別々にしたり、違う場所に移したり、ということもありません。最初に契約したお部屋にずっと安置できます。
また「マンションタイプ」と聞くとなんだか味気ないイメージを持たれる方もいるかと思いますが、実際にはお寺や墓地の風景になじみ、美しく映えるデザイン性豊かな墓地が増えてきています。従来墓で使用される墓石とそん色のない上質な石材で、つやと深み、重厚感のあるデザインや、強化ガラス製で洗練された清潔感のある、明るい印象を与えるデザインなどが人気で、年々種類も増えており、選ぶ楽しみも味わえます。
「個人単位のお墓」なのでランニングコスト不要
ここまでの話を踏まえて、「それでは、従来のお墓が小さくなっただけの違いなの?」と思うかもしれません。確かに“仕様”を先に説明すると、従来のお墓との違いは大きさだけのように受け取られがちですが、もちろん、それだけではありません。
承継者を必要としない、というのが従来のお墓とはまったく異なる点です。お寺がずっと供養をし、管理もきちんとしていくことがセットになっているお墓なのです。だからこそ「永代供養墓」なのであり、この点が承継者に悩んでいる方から最も大きな支持を集めています。
もう1つ、従来のお墓と違う点があります。それは、家族や一族で1つのお墓を買う、という考え方ではなく、個人単位で登録するという考え方に基づいていることです。
つまり、個別墓を契約する際、誰がそこに入るかをあらかじめ登録するのです。先述のとおり、なんらかの事情がありあとから増える場合は、その際に追加登録することになります。最初に登録がないからといって追加できないわけではありませんので安心してください。
従来のお墓の場合は、あらかじめ誰が入るかは決まっていなくても建てられますので、その点が永代供養墓の個別墓は異なります。
契約の際に、登録する人数に応じて志納料(利用料)がかかりますが、ここにはお寺が未来にわたり供養をすることへのお心づけも含まれています。年間管理料や維持費といった、従来のお墓であれば毎年支払う必要のある費用もかかりません。
三回忌、七回忌といった法事は遺族の意向により行う場合と行わない場合があるので、費用は行う場合のみ別途かかることにはなりますが、いわゆるランニングコストが不要という面も、利用される方には好評です。
樺山 玄基
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】