永代供養墓のなかでも特に人気の「樹木葬」
樹木葬とは一般的に、墓石の代わりに木を植え、その下に遺骨を埋葬する形式を指します。ここ10数年の間に、おもに地方の山里にあるお寺を中心に広まってきたスタイルで、亡くなったあと自然に還れるという自然志向に特に、人気が高まっています。
日本人の死生観をなかなか一言で言い表すのは難しいのですが、「よろずの神」といって草木や花、石、風など自然界のあらゆるものに神が宿っているという考えに共感する人は多いように思います。
特定の宗教を持たない人でも、例えば近しい人が亡くなったあとに庭の花が咲いたら、その人の生まれ変わりだと思ってみたり、人生の門出に晴れわたると、天が祝福してくれている、と感じたり、といったことは誰にも一度くらいは経験があるのではないでしょうか。
また、特別に死生観と結び付かなくとも、大自然の中に身を置けば心が安らいだり、ハレバレとしたりといった気分になるものでしょう。
樹木葬はそんな、“自然とともにある”心地よさを連想させる一面もあり、人気を得ているのかもしれません。
なお、埋葬する場所は自然豊かな里山のほか、一見、公園のように整備された緑地もありますが、いずれも墳墓として許可を得た土地であり、法律上は墓地の扱いです。
よく、樹木葬というと「散骨のようなもの?」と聞かれるのですが、散骨とはこの点が違います。
散骨では、お骨は埋めるのではなく、文字が示すように「撒く」、すなわち埋葬しない弔い方です。埋葬しないために、弔う場所について国の明確な法律がないというのが実情です。簡単にいえば、どこに撒いても構わない、ということになります。
ただし、自治体レベルで、散骨を取り扱っている業者への規制や、個人が散骨する際に守るべき細かな条例を定めている場合はあります。
「土に還ること」が目的だが…どんな埋葬方法なのか?
話を樹木葬に戻しますが、埋葬方法は一般的な墓地の永代供養墓と同様、「合祀タイプ」と「個別墓タイプ」があります。
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〈合祀タイプ〉
永代供養墓の最も古いタイプ。安価で年間管理費や維持費などもかからず、お寺が永代にわたり供養する。生前に購入できる。
〈個別墓タイプ〉
お墓の承継者がいないので永代供養墓を希望するが、ほかの人と一緒のお墓には入りたくない、というニーズに応えた、夫婦や家族単位で入れる個室の墓。年間管理費や維持費などがかからないのは合祀タイプと同じ。入る人は登録制で、生前に決められるが、あとから追加も可能。志納料(利用料)は人数に応じてかかる仕組み。
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合祀タイプは石塔の代わりとなる大きな木(シンボルツリーと呼ばれることがあります)の下に、ご遺骨を埋葬します。個別墓タイプは個別に区画を設け、その区画ごとに植樹し、その下にご遺骨を埋葬するのが一般的です。樹木が墓標の代わりとなり、お参りの際の目印になるというわけです。区画は個人の場合もあれば夫婦やご家族単位の場合もあります。
ただ場所によっては、埋葬自体は個別なのですが、明確な区分けをしていないところもあります。年月が経つにつれ草木が茂ってくるなどで環境が変わり、お参りの際に埋葬した場所が分からなくなることもあります。
また、区画をはっきりさせ植樹したとしても、今度は樹木の成長にしたがい剪定したり、落ち葉の掃除をしたりなど、環境整備のためにずっと面倒を見続ける必要があります。このために樹木葬を扱っている会社では、年間管理料や維持費を継続的に申し受けるところもあります。
永代供養墓は本来、こうしたランニングコストが発生しないことが魅力の一つとなっているので、このことをデメリットと受け取る利用者もいるかもしれません。
そこで、区画ごとの目印として樹木ではなく、小さな石板を墓誌として個別に設置する方法をとることもあります。これならお参りの際、場所が分からなくなることもありませんし、樹木のように後々世話をする必要もないので、そのための費用も発生しません。ヨーロッパの墓地はこのように、陽当たりのよい広々とした緑地に墓誌が並ぶ光景がなじみ深いものになっているかと思いますが、それに似たイメージなのではと思います。
いずれにしても埋葬方法は、樹木葬墓地の場合、土に還ることを目的とするため、納骨堂(カロート)には入れずに直接土にふれるようにおさめるのが主流です。
とはいえ、「お骨をそのまま土に埋めるのはちょっと抵抗が…」「樹木葬でも骨壺に入れて埋葬したい」そうした声も実は少なくありません。そこで近年は、土に溶ける素材を用いた骨壺や袋を用いるところも増えてきました。
余談ですが、樹木葬は今のところ、どちらかといえば女性の人気が高い傾向があります。もしかしたら女性の方が、家族やお墓のことでたいへんな思いをすることが多く、ゆえに自分の時はしがらみや面倒なことを残したくない、と樹木葬に開放的なイメージを抱きやすいのかもしれません。
樺山 玄基
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