姑が入院した。一週間程度のはずが「ベッドに寝かせようと抱えたら痛がり、転落して骨折されたかもしれません」。三ヶ月も入院期間が延びた。当の本人は陽気に勝手なことを喋り、揚句には天井にパンが並んでいるなど言い出す。思わぬ事態の展開に我々家族のショックは大きかった。 ※幻冬舎ゴールドライフオンラインの人気エッセイ『嫁姑奮戦記』を連載でお届けします。

「香典を」「誰が亡くなったの」「誰やら居るやろ」

どうしたのかと尋ねると、香典持って行かなあかんと言う。

 

一体誰が亡くなったのと聞くと誰やら居るやろと自分でも分からない様子、とにかく真夜中で皆寝ているやろうから明日にしたらと言うと、そうか、今、夜中なんか、ほな明日にしようかと言ってしばらく宙を見据えて独り言を言ったりしていたが、やがて大鼾、外を見ると夜も白々と明けかけている。

 

病院泊一日目、私はとうとう徹夜した。

 

病棟が機能するまで一時間ほどの間トランプで一人遊びをする。やがて看護婦さんが見え、様子を聞かれる。夜中も何度も来てくださったので状況は分かっておられたが。本人は熟睡中である。

 

入院から三日目、皮膚科の婦長さんが謝りに来られる。泊まるとの申し出を断ったうえでの転落事故で本当に申し訳ないと言われる。当直の看護婦さんも見え、土下座されんばかりに謝られる。

 

病院側にしてもこんな患者を受け入れたばっかりにとんだ災難に遭ったわけで、お互い不運だったとしか思いようがない。しかし、そのように謝られたことで、胸のつかえが下りたことは確かだ。

 

点滴、ヘルペスの手当て、清拭、下の洗浄消毒等が担当の看護婦さんを中心に行われる。

次ページ二晩寝ていない。そこらじゅう血だらけだったらしい。

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    大野 公子

    幻冬舎メディアコンサルティング

    入院早々骨折、幻覚幻聴、物忘れ……病院を騒がせる姑と嫁のやり場のない戦い。 介護する側、される側、双方には今日に至るまでの歴史がある。 血縁だけでは語れない愛がそこにはあった。 嫁が綴った過去の日記をもとに、「…

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