姑が入院した。一週間程度のはずが「ベッドに寝かせようと抱えたら痛がり、転落して骨折されたかもしれません」。三ヶ月も入院期間が延びた。当の本人は陽気に勝手なことを喋り、揚句には天井にパンが並んでいるなど言い出す。思わぬ事態の展開に我々家族のショックは大きかった。 ※幻冬舎ゴールドライフオンラインの人気エッセイ『嫁姑奮戦記』を連載でお届けします。

二晩寝ていない。そこらじゅう血だらけだったらしい。

点滴の時は一時も目が離せない。手を勝手に動かすばかりでなく針を抜きにかかるからだ。片手はしっかり握っていなければならない。尿管も引っ張るので用心が必要だ。

 

一時もじっとしていない手には、最後まで悩まされることになるが。午後三時の面会時間には親戚の者が二人来る。さすが商売人の姑、他人に対しては礼儀を心得ている。ちゃんと礼を言ったり合槌をうったりして、そばで聞いているととても同一人物とは思えない。

 

夜はまた動き回って寝ず、夜明けと共に眠る。私は姑を看ながらテレビを見たり本を読んだり日記を書いたりして夜を明かす。まる二晩徹夜だ。姑の高鼾を聞いていると無性に腹が立ち、眠気すら感じない。いつまでもつだろうか。

 

四日目に皮膚科の部長先生が様子を見に来られる。申し訳なかったと詫びられ、一月分の部屋代の支払い免除を申請した、これくらいしかさせてもらえないが勘弁してくださいと言われる。ありがたくお受けすることにする。

 

朝から明日の手術に備え二十四時間点滴となる。採血や血圧測定、浣腸も数回に及び忙しい一日だった。

 

点滴が夜通しあるため、付き添いが一人では無理なので娘と二人で付く。私は二晩寝ていないし今後のため娘に頼み別室で朝四時頃まで寝させてもらう。

 

病室に戻って聞くところによると、娘がちょっと油断した隙に点滴を抜きそこらじゅう血だらけになり、看護婦さんと三人で着替えさせたりシーツや布団を替えたり大変だったらしい。針も飛んでいたそうだ。点滴は外してある。また朝から入れるとのことだった。娘を寝に帰らせる。

 

付き添い早々大変な目に遭わせた。本人はいつも通り白河夜船。私は四時間ほど睡眠を取ったおかげでまた一日持ちそうだ。今日の手術うまくいくだろうか。

 

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンライン掲載の『嫁姑奮戦記』を再編集したものです。

 

 

嫁姑奮戦記

嫁姑奮戦記

大野 公子

幻冬舎メディアコンサルティング

入院早々骨折、幻覚幻聴、物忘れ……病院を騒がせる姑と嫁のやり場のない戦い。 介護する側、される側、双方には今日に至るまでの歴史がある。 血縁だけでは語れない愛がそこにはあった。 嫁が綴った過去の日記をもとに、「…

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