「病院M&A」必須知識…医療法人の株主=「社員」が持つ権利

病院の経営課題は年々深刻化する一方です。医療行政の長期的変化、診療報酬改定、高度化する医療技術への対応、収益力低下、人材不足や採用難、後継者の不在…。そんななか解決手段として注目を集めているのが「病院M&A」。ここでは病院M&Aを検討するうえで知っておくべき知識を解説します。今回のテーマは「出資持分と拠出金」。医療法人の種類によってどのような違いがあるのでしょうか? ※本連載は、矢野好臣氏、余語光氏の共著『病院M&A』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

株主総会に類似…医療法人の「社員総会」とは?

前回の記事『複雑な「医療法人の種類」…「病院M&A」必須予備知識とは』(関連記事参照)では、病院M&Aを検討する際の事前知識として「医療法人の種類」を解説しました。医療法人はさまざまな組織累計がありますが、ここでは一般的なタイプとして、社団医療法人における基金拠出型医療法人を「持分なし医療法人」、一般の持分あり医療法人を「持分あり医療法人」として説明します。

 

法人は、自然人(人間)と同様に、法律上の権利義務をもつ主体となれる存在ですが、法人自体が行動したりなにかを決めたりすることはできません。それは、法人に属する自然人が行います。

 

そして、法人としての意思決定や行為を行う人や会議体を法人の「機関」と呼びます。社団医療法人については、「社員総会」「理事会」が機関として定められています。

「株主」と「社員」の決定的な違い

「社員総会」は、医療法人の最高意思決定機関です。株式会社の「株主総会」をイメージしてもらうといいでしょう。役員の選任・解任、定款の変更、法人の解散など、医療法人の運営上の重要事項は、すべて社員総会で決定されます。

 

社員総会での議決権は「社員1人につき1票」です。株式会社のように保有株式数=出資額に応じた議決権数となっていない点に、注意してください。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

また、「社員」ですが、これは「従業員」のことではありません。社員とは、「社員総会」で議決権をもつ者を指します。社団医療法人では、原則3人以上の社員が必要で、社員総会の承認で社員になれます。なお、社員になれるのは原則自然人だけで、法人は社員になれません。

 

社員は、株式会社における株主に近い立場ですが、株主との大きな違いは、社員総会での意思決定権と出資金(または拠出金)に対する財産権とが分離されているという点です。極端にいえば、出資がゼロでも社員になることができます。逆に社員ではない者が出資をすることもできます(実際には社員が出資しているケースがほとんどです)。

 

そのため、先に述べたように社員総会における議決権数は、株式会社における株主総会のように出資分に比例した議決権数とはならず、社員1人につき1票となっているのです。いわば、意思決定権が出資ではなく「人」に帰属しているのです。これが株式会社と医療法人との大きな違いであり、M&Aにも関連してくるところなのでよく理解しておいてください。

 

名南M&A株式会社作成
[図表1]「医療法人」と「株式会社」の比較 名南M&A株式会社作成

医療法人の役員は「理事、理事会、理事長、監事」

「理事」は社員総会で選任される役員で、株式会社でいうと取締役に相当します。原則3人以上(例外あり)が必要、任期は2年です。理事と社員は兼任することが可能で、オーナー系の医療法人では兼任していることもよくあります。

 

理事は、業務執行機関である「理事会」を構成します。また、理事会によって、1人の「理事長」が選出されます。理事長は株式会社でいう代表取締役に相当します。医療法人の代表であり、業務上の最高責任者となります。

 

なお、「監事」は、理事の業務執行や財産管理などの監査を行う役員で株式会社の監査役に相当します。1人以上が必要です。

 

名南M&A株式会社作成
[図表2]「社員総会」と「理事会」の関係(社団医療法人の場合) 名南M&A株式会社作成

名南M&A株式会社 医療支援部 部長

1987年生まれ。岐阜県出身。

大学卒業後、株式会社名南経営にて、M&Aアドバイザリー業務および中国進出支援業務に従事する。

名南M&A株式会社設立後、医療・介護・薬局のヘルスケア産業分野に特化し事業承継、業界再編支援を手掛ける。
講師として金融機関M&Aセミナーをはじめ、医療介護M&Aセミナー・M&A勉強会、業界再編セミナーを多数開催。

著者紹介

名南M&A株式会社  医療支援部 課長 認定登録医業経営コンサルタント登録番号7795号
福祉用具専門相談員/医療経営士

1986年生まれ。岐阜県出身。

名古屋市立大学卒業。大学卒業後、地方銀行入行。銀行本部の事業性ソリューション部門における医療・介護福祉専担者として、事業承継支援や開業支援、付随するファイナンス支援に従事。
また、在職中に同業界への出向も経験するなど現場目線も併せ持つ。

名南コンサルティングネットワーク参画後も継続して医療・介護福祉分野に特化。病院を中心に、診療所・介護施設・調剤薬局のM&Aコンサルティング業務に従事している。

著者紹介

連載医師・看護師を守り地域医療を存続させる「病院M&A」

医師・看護師を守り地域医療を存続させる病院M&A

医師・看護師を守り地域医療を存続させる病院M&A

矢野 好臣

余語 光

幻冬舎メディアコンサルティング

創業者利益の確保、後継者問題の解決、従業員の雇用継続など、病院存続のためには様々な経営者努力が必要なものです。本書籍では、東海エリアで実績No.1のコンサルタントが、数多くの成功・失敗事例をもとにM&Aのポイントを徹…

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