株主総会に類似…医療法人の「社員総会」とは?
前回の記事『複雑な「医療法人の種類」…「病院M&A」必須予備知識とは』(関連記事参照)では、病院M&Aを検討する際の事前知識として「医療法人の種類」を解説しました。医療法人はさまざまな組織累計がありますが、ここでは一般的なタイプとして、社団医療法人における基金拠出型医療法人を「持分なし医療法人」、一般の持分あり医療法人を「持分あり医療法人」として説明します。
法人は、自然人(人間)と同様に、法律上の権利義務をもつ主体となれる存在ですが、法人自体が行動したりなにかを決めたりすることはできません。それは、法人に属する自然人が行います。
そして、法人としての意思決定や行為を行う人や会議体を法人の「機関」と呼びます。社団医療法人については、「社員総会」「理事会」が機関として定められています。
「株主」と「社員」の決定的な違い
「社員総会」は、医療法人の最高意思決定機関です。株式会社の「株主総会」をイメージしてもらうといいでしょう。役員の選任・解任、定款の変更、法人の解散など、医療法人の運営上の重要事項は、すべて社員総会で決定されます。
社員総会での議決権は「社員1人につき1票」です。株式会社のように保有株式数=出資額に応じた議決権数となっていない点に、注意してください。
また、「社員」ですが、これは「従業員」のことではありません。社員とは、「社員総会」で議決権をもつ者を指します。社団医療法人では、原則3人以上の社員が必要で、社員総会の承認で社員になれます。なお、社員になれるのは原則自然人だけで、法人は社員になれません。
社員は、株式会社における株主に近い立場ですが、株主との大きな違いは、社員総会での意思決定権と出資金(または拠出金)に対する財産権とが分離されているという点です。極端にいえば、出資がゼロでも社員になることができます。逆に社員ではない者が出資をすることもできます(実際には社員が出資しているケースがほとんどです)。
そのため、先に述べたように社員総会における議決権数は、株式会社における株主総会のように出資分に比例した議決権数とはならず、社員1人につき1票となっているのです。いわば、意思決定権が出資ではなく「人」に帰属しているのです。これが株式会社と医療法人との大きな違いであり、M&Aにも関連してくるところなのでよく理解しておいてください。
医療法人の役員は「理事、理事会、理事長、監事」
「理事」は社員総会で選任される役員で、株式会社でいうと取締役に相当します。原則3人以上(例外あり)が必要、任期は2年です。理事と社員は兼任することが可能で、オーナー系の医療法人では兼任していることもよくあります。
理事は、業務執行機関である「理事会」を構成します。また、理事会によって、1人の「理事長」が選出されます。理事長は株式会社でいう代表取締役に相当します。医療法人の代表であり、業務上の最高責任者となります。
なお、「監事」は、理事の業務執行や財産管理などの監査を行う役員で株式会社の監査役に相当します。1人以上が必要です。