病院経営者の悩みは増える一方です。地域医療構想など医療行政の長期的変化、診療報酬改定、医療技術の高度化への対応、足元での収益力低下、厳しさを増す人材不足・採用難、経営者自身の高齢化、後継不在…。そんななか、これらを解決する有効手段として「病院M&A」が注目されています。ここでは病院M&Aを検討する際の必須知識として知っておきたい「医療法人の種類」を解説します。※本連載は、矢野好臣氏、余語光氏の共著『病院M&A』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医療法人は大きく分けて「財団」と「社団」の2つ

M&Aのスキームは医療法人の組織形態などで異なる場合もあるので、最初に確認しておきます。まず、病院の経営主体は、医療法人、個人のほか、国、公的医療機関(地方自治体、日本赤十字社、済生会、厚生連、国民健康保険団体連合会など)、そのほか(公益法人、私立学校法人、社会福祉法人、医療生協、企業など)があり、多岐にわたっています。

 

これらのうち、割合が最も多い経営主体が医療法人で、約70%を占めていますが、病床数で見ると約55%なので、医療法人が運営する病院は比較的小規模なものが多いことが分かります。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

医療法人には、医療法上、さまざまな組織類型が規定されています。まず、大きく「財団医療法人」と「社団医療法人」とに分かれます。「財団」とは、提供された財産が基盤となり、その運用を目的とする組織です。

 

一方「社団」とは、一定の目的をもとに集合した人の団体で、人が基盤になります。社団医療法人は医療を目的とした人が集まる組織です。実際には医療法人の99%以上が社団医療法人なので、本連載でも以後は社団医療法人のみを対象として説明します。

同じ社団医療法人でも「持分の有無」で分類

社団医療法人は、「出資持分の定めのある医療法人」(以下「持分あり医療法人」と略記)と「出資持分の定めのない医療法人」(以下「持分なし医療法人」と略記)とに分かれます。出資持分とは、定款の定めるところにより、出資額に応じて払戻しまたは残余財産の分配を受ける権利のことです。それが医療法人の定款に定められているのが、持分あり医療法人です。

 

持分あり医療法人は、さらに「一般の持分あり医療法人」と、「出資額限度法人」とに分かれます。ほとんどは一般の持分あり医療法人なので、以後、本連載では「持分あり医療法人=一般の持分あり医療法人」として扱います。

 

一方、持分なし医療法人は、「一般の持分なし医療法人」「社会医療法人」「特定医療法人(税法上の分類)」に分かれます。さらに、「一般の持分なし医療法人」は「基金拠出型医療法人」と、基金のない「一般の社団医療法人」とに分かれます。持分なし医療法人の多くは、「基金拠出型医療法人」なので、以後本連載では「持分なし医療法人=基金拠出型医療法人」として説明します。

 

文章で書くとややこしいですが、まとめると【図表】のようになります。


 

※1 …2007年4月以降新規設立不可 ※2 …本連載で主に取り扱う持分あり医療法人 ※3 …本連載で主に取り扱う持分なし医療法人 名南M&A株式会社作成
【図表】医療法人の種類は、これだけある ※1 …2007年4月以降新規設立不可
※2 …本連載で主に取り扱う持分あり医療法人
※3 …本連載で主に取り扱う持分なし医療法人
名南M&A株式会社作成
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医師・看護師を守り地域医療を存続させる病院M&A

医師・看護師を守り地域医療を存続させる病院M&A

余語 光

幻冬舎メディアコンサルティング

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