医療法人は大きく分けて「財団」と「社団」の2つ
M&Aのスキームは医療法人の組織形態などで異なる場合もあるので、最初に確認しておきます。まず、病院の経営主体は、医療法人、個人のほか、国、公的医療機関(地方自治体、日本赤十字社、済生会、厚生連、国民健康保険団体連合会など)、そのほか(公益法人、私立学校法人、社会福祉法人、医療生協、企業など)があり、多岐にわたっています。
これらのうち、割合が最も多い経営主体が医療法人で、約70%を占めていますが、病床数で見ると約55%なので、医療法人が運営する病院は比較的小規模なものが多いことが分かります。
医療法人には、医療法上、さまざまな組織類型が規定されています。まず、大きく「財団医療法人」と「社団医療法人」とに分かれます。「財団」とは、提供された財産が基盤となり、その運用を目的とする組織です。
一方「社団」とは、一定の目的をもとに集合した人の団体で、人が基盤になります。社団医療法人は医療を目的とした人が集まる組織です。実際には医療法人の99%以上が社団医療法人なので、本連載でも以後は社団医療法人のみを対象として説明します。
同じ社団医療法人でも「持分の有無」で分類
社団医療法人は、「出資持分の定めのある医療法人」(以下「持分あり医療法人」と略記)と「出資持分の定めのない医療法人」(以下「持分なし医療法人」と略記)とに分かれます。出資持分とは、定款の定めるところにより、出資額に応じて払戻しまたは残余財産の分配を受ける権利のことです。それが医療法人の定款に定められているのが、持分あり医療法人です。
持分あり医療法人は、さらに「一般の持分あり医療法人」と、「出資額限度法人」とに分かれます。ほとんどは一般の持分あり医療法人なので、以後、本連載では「持分あり医療法人=一般の持分あり医療法人」として扱います。
一方、持分なし医療法人は、「一般の持分なし医療法人」「社会医療法人」「特定医療法人(税法上の分類)」に分かれます。さらに、「一般の持分なし医療法人」は「基金拠出型医療法人」と、基金のない「一般の社団医療法人」とに分かれます。持分なし医療法人の多くは、「基金拠出型医療法人」なので、以後本連載では「持分なし医療法人=基金拠出型医療法人」として説明します。
文章で書くとややこしいですが、まとめると【図表】のようになります。