解説:相続放棄はいつまでに行えばいいのか?
相続放棄の手続きは相続があったことを知ってから、原則として3ヵ月以内に行うことになっています。
放棄を行ってそれが受理された場合、3ヵ月以内であっても放棄の「撤回」を行うことはできません。「撤回」を認めてしまった場合、相続人の確定や遺産分割に重大な影響を及ぼすためです。プラスの財産よりマイナスの財産の方が多いと思って相続放棄したものの、実際はプラスの財産が多いことが分かったという理由が存在しても「撤回」できないのは同様です。
一方、放棄の「取消し」は認められるケースがあります。例えば詐欺や脅迫によって放棄をさせられた場合や錯誤があった場合です。
事例ではAさんは有価証券を隠したわけではないので詐欺には該当しませんし、伯父伯母を脅迫してもいないので、残る可能性は錯誤になります。
錯誤が認められるには、放棄を行った事情(理由、動機)に重大な勘違いがあり、それが放棄の申述書に明記されていることが必要です。マイナスの財産のほうが大きいと思ったというのも錯誤の理由として認められた事例がありますが、放棄したほうが十分な財産調査を行っており、かつそれを立証できる場合に限られ、かなりハードルが高いと言われています。今回のケースでは資料がタンスから出てきたということから、錯誤による「取消し」が認められる可能性も高くないように思われます。
一度行った放棄の撤回はできず、取消しも容易なことではできません。財産の精査が終わっていない場合には、熟慮期間(3ヵ月)の延長の制度もありますので、放棄をする場合には慎重な判断が求められます。
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】