父の通帳残高が想定より少ない…兄弟間バトルの始まり
Aさん…父。がんで他界。妻とは既に死別
Bさん…長男。実家近くの東京郊外のマンション暮らし。年上で我慢しがちな性格
Cさん…次男。転勤が多く全国を転々としている。末っ子気質で自由な性格
[遺産の内訳]
自宅
貯金(1,000万円)
父は自分の死後は、遺産を長男(Bさん)と次男(Cさん)で平等にわけるようにいい聞かせていました。しっかり者の長男と、明るい次男。喧嘩をすることはあれど、互いの足りない部分を補い合う良い兄弟だったそうです。
父の遺言も「遺産相続なんかで仲が悪くなってほしくない。兄弟助け合って生きていってほしい」との思いからだったといいます。
しかし、いざ相続の話し合いをはじめると、貯金通帳には1,000万円しか残っていなかったのです。実家の管理をしていたのは長男だったため、次男は疑念を抱きます。
長男は、「実家の管理や父の入院費にもお金が必要だった」と主張しますが……。
長男の言い分:介護した人が遺産を多くもらうのは当然
「確かに、隠していたのは申し訳ないと思いますよ。でも、父の晩年の世話をしたのは俺なんです」
長男のBさんは、苦しげに顔を歪めます。
「父ががんを宣告されてから、俺たち一家が付きっきりで看病してました。入院するまでは在宅介護もしてたんです。長男だから親の面倒をみるのは当然だって、周りは思ってたみたいですけど」
BさんとCさん兄弟は、歳がそう離れていません。それでもBさんは『お兄ちゃんでしょ』とたしなめられることが、幼いころから多かったといいます。それに対して、弟のCさんは、昔から自由育てられ、ある程度のわがままは聞いてもらえました。
そんなところをBさんは苦々しく思うことはあれど、弟のCさんのことは嫌いではなかったといいます。Cさんは何だかんだでBさんのことを頼りにいる様子でしたし、嫌みのない態度を可愛く思ってもいました。
「それでも、父に認知症の気が出たって何も手伝わないのは酷いと思いましたよ。Cも転勤続きで忙しいとわかってはいますけど、俺たちだって仕事や子育てがあるのに……」
父の容態がよくないと話しても、手助けは滅多にしてくれなかったそうです。BさんもCさんも家庭を持ち、子どもは受験期に差しかかっていました。同じような状況だったにもかかわらず、Bさん一家に負担は集中していたのだといいます。
「俺たちにも生活があるから、負担を分散させたいと…そう何度か相談しましたが、Cは『仕事がどうしても忙しい。東京にしばらく帰れそうにない』の一点張りで」
Bさんは静かに首を振ります。妻からも何度も急かされて、いつも板挟みのストレスがあったそうです。
「Cのことは嫌いじゃありませんし、父さんの『遺産は兄弟で平等にわける』という遺志を尊重したいとは思いますよ。でも、Cは父さんのオムツ替えの面倒も、入院の面倒な手続きもせずに悠々と暮らしてきたんです。遺産を多くもらって当然じゃありませんか?」
実際、父の入院やなんやらで、お金が必要だったことは事実だとBさんは話します。
「それに、Cはいつも『兄さんに任せるよ』しかいわないのに、相続のときばかりこんな……どうにも調子が良いんですよ、あいつは」
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