「相続分の譲渡」は、どのように行えばいいのか?
相続分の譲渡をする場合には、「相続分譲渡証書」という書類を作成し、署名と押印(実印)をし、印鑑証明書と一緒に返送してもらいます。金融機関によっては「委任状」を必要とするところもあるため、委任状も併せて取得した方がいい場合もあるので確認してください。
じつは上記のAさんのケースは、筆者が相談を受けた実際の事例なのですが、筆者はAさんの代理人として、Bさんに相続分の譲渡を打診するだけでなく、ほかの相続人にも同様の書類を送付し、状況を見守りました。
すると、Bさんだけではなく、遺産分割に関する連絡をすべて無視していたGさんとHさんも書類を返送してくれました。GさんとHさんは、単純に話し合いが面倒だったようです。また、Fさんも「きょうだいのGとHがそうするなら、自分も同じやり方でいい」といって、同様に相続分の譲渡の書類を返送してくれました。
結果、B・F・G・Hの各氏、合計4人が話し合いから抜けますので、C・D・Eの3氏とだけ話し合いをすればいいことになります。当初は8人全員で話し合いをしなければならなかったところ、半分の4人でよくなったのです。
この件では、最終的に4人で話し合いを行いましたが、人数が少ないぶんスムーズで、無事早期解決することができました。
今回ご紹介した案件のように、多くの相続人が相続分の譲渡に応じてくれるケースばかりではありませんが、1人でも話す相手が減るのであれば、かなり負担が軽減されるのは事実です。これまで、打診した全員が応じたケースもあります。
一概にはいえませんが、遺産の金額が小さいと、時間や労力などの負担を天秤にかけ、「もらわない」という判断になりやすく、相続分譲渡を了承してくれる可能性が高いようです。当然、遺産の金額が大きければ、相続分譲渡の話にはなりにくい傾向が見て取れます。
とはいえ、その相続人の経済力や、被相続人やほかの相続人との関係性、過去の感情論などさまざまな事情で判断は変わります。どんなに遺産が多かったとしても、たとえば、顔すら覚えていない生き別れの親の遺産は受け取りたくないという人もいますし、逆に、養育費をもらわなかったのだから、どれほど少額でも受け取りたい、という方もいます。現金なのか、不動産なのかといった、相続財産の種類によっても変わってきます。必ずしも遺産額の大小だけで測れない部分もあるということです。
これらの傾向を踏まえたうえで、もし遺産分割協議のテーブルにつく相続人の人数が多い場合は、「相続分の譲渡」について検討してみてもいいかもしれません。
國丸 知宏
弁護士法人菰田総合法律事務所
弁護士
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